2025年以降に発売予定の電気自動車は?価格や性能を徹底チェック

 

 

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電気自動車(EV)はガソリン車に比べると車種が少なく、現状では選択肢がある程度限られています。しかし、EVは今後本格的な普及期を迎え、自動車メーカー各社は2025年以降に新型車を続々と投入する予定です。そこで2025年以降に発売予定のおもな新型車のEVについて、現在わかっている公式情報をもとに自動車ジャーナリストの佐藤耕一さんが特徴や性能を紹介します。

 

 

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2025年以降に新型EVが続々と登場する理由

BMW「ビジョン・ノイエ・クラッセ」

BMW「ビジョン・ノイエ・クラッセ」(画像:BMW)

 

2025年以降にEVは大きな転換点を迎え、国内外の自動車メーカーから続々と新型車が登場する予定です。しかし、なぜ「2025年以降」なのでしょうか。まずその理由について解説します。

 

自動車メーカーがプライドをかけてつくる次世代EV


2020年から2023年にかけて、日本や欧米の大手自動車メーカーがさまざまなEVを発売しました。それらのモデルを“第一世代”とするなら、2025年から2026年にかけては“次世代のEV“ともいうべきニューモデルが各メーカーから続々登場する予定です。  

それらの次世代EVは、第一世代のEVと比較した場合、おもに以下の4つの観点で大きく進化したモデルといえるでしょう。

〈図〉次世代EVの進化ポイント

次世代EVの進化ポイント

 

※1:「Software Defined Vehicle」の略。「ソフトウェアによって定義される自動車」を意味し、クラウドとの通信により、自動車の機能を継続的にアップデートすることで従来車にない新たな価値が実現可能な次世代自動車のこと。

 

専門用語が多くわかりづらいかもしれませんが、これらの進化ポイントは世界最先端を行くテスラや中国のEVベンチャーが先行して実装し、進化させてきた要素技術です。日米欧の大手自動車メーカーはこうした技術で大きく遅れをとってきました。

とくに日本の自動車メーカーは、従来の車両開発で身についた既成概念のなかでEVをつくったため、信頼性や安全性についてはこれまでと同様に十分な品質を確保しながらも、EVとしての性能やUXという点で商品力には大きな差をつけられてしまいました。

その遅れを一気に取り戻すべく、まっさらな状態から最高のEVを目指し、プライドをかけてつくり上げるのが次世代のEVということです。それが2025年から続々と登場し始めるのです。

 

 

トヨタもホンダも次世代EVに本気になっている?

プレゼンをする加藤武郎プレジデント

トヨタ「BEVファクトリー」の加藤武郎プレジデント(画像:トヨタ)

 

ゼロベースでEVをつくり上げたテスラや中国のEVベンチャーに追いつき追い越すには、小手先の改良だけでは不可能です。そこで国内の自動車メーカーも従来の車両開発のスキームから切り離し、次世代EVの開発に専念する体制を準備してきました。

たとえば、トヨタは2023年に専任組織「BEVファクトリー」を立ち上げ、EVの開発・生産・事業のすべてのプロセスを一気通貫で行うとしています1)。ホンダもトヨタのBEVファクトリーと同様の体制となる「電動事業開発本部」を2023年に新設2)。ホンダの原点に立ち返り、ゼロから新しいEVを創造することを目指した「0シリーズ」のコンセプトを発表しています。

一方、スズキは2021年からインド北西部のグジャラート州でEV生産の準備を進めてきました3)。2025年にはグジャラート工場でEVの生産を開始し、欧州・インド・日本などの各地で販売するとともに、トヨタにOEM供給する計画です。

 

 

 

2025年以降に発売される注目の新型EVを紹介

それでは、2025年以降にどんな新型EVが登場するのか、「国産車」「輸入車」に分けてそれぞれ具体的に見ていきましょう。なお、以下の新型EVにはメーカーが詳細な情報を公開しているものもあれば、車名すら明らかになっていないものもあります。

また、国産車・輸入車ともに、2024年12月時点で日本市場への導入が未定となっている新型EVも多く含まれています。

 

【国産車編】2025年以降に発売される新型EV


2025年以降の発売が予定される、もしくは発売が期待される国産車の新型EVは、2024年12月時点で6〜9車種程度あります。

 

以下、メーカーを50音順で表示しています。

 

Ⅰ.スズキ「eビターラ」

スズキ「eビターラ」

スズキ「eビターラ」(画像:スズキ)

 

スズキが2025年春からインドのグジャラート州で生産を開始するのが、スズキの世界戦略EVであり、同社初となるEVの量産モデル「e VITARA(ビターラ)」です3)。2025年夏ごろから欧州、インド、日本など世界各国で順次販売が開始されます。

「eビターラ」は全長約4.3mのコンパクトSUVで、プラットフォームにはEV専用に開発された「HEARTECT-e」を採用し、ショートオーバーハングによる広い室内空間を特長としています。パワートレインにはモーターとインバーターを一体化した高効率なeアクスルと、安全性の高いリン酸鉄リチウムイオン(LFP)バッテリーが採用されています。

バッテリー容量は49kWhと61kWhが用意され、61kWhには前後にモーターを搭載した4WDモデルもラインナップされます。

 

 

Ⅱ.ソニー・ホンダモビリティ「アフィーラ」

ソニー・ホンダモビリティアフィーラ

ソニー・ホンダモビリティ「アフィーラ」(画像:ソニー・ホンダモビリティ)

 

ソニーグループとホンダが50%ずつ出資してソニー・ホンダモビリティ(SHM)を設立したのは2022年9月のことでした。このSHMの第1号モデル「AFEELA(アフィーラ)」4)が、いよいよ2025年に北米市場から先行予約が開始されます。納車は2026年が予定され、国内では2026年中の発売が見込まれています。

「アフィーラ」は、全長5m弱のゆったりとしたボディのミドルラージセダンです。インテリアにはソニーの最先端デジタルUXが盛り込まれ、これもソニーが得意とするセンサー技術によって、最先端の運転支援ソリューションを実現するとしています。 

 

ソニー・ホンダモビリティアフィーラ後ろ姿

ソニー・ホンダモビリティ「アフィーラ」(画像:ソニー・ホンダモビリティ)

 

車載SoC(※2)はクアルコムの自動車向けソリューション「Snapdragon Digital Chassis」を採用し、なんと800TOPS(※3)という高い演算処理能力を誇ります。それにより、デジタルUXと高機能な運転支援を両立し、またテスラなどと同様にSDVとして継続的な無線通信(OTA)によるアップデートにも対応可能としています。

バッテリー容量は91kWhと大容量ですが、急速充電性能は150kWと標準的な水準にとどまっています。車両価格は800〜1000万円になると予想されます。

 

※2:「System On a Chip」の略で、ひとつの半導体チップに装置やシステムなどのあらゆる機能を集約する方式のこと。
※3:「Tera Operations Per Second」の略で、1秒間に行える演算処理回数(兆回)の単位を表す。

 

 

Ⅲ.トヨタ「アーバン クルーザー」

トヨタアーバン クルーザー

トヨタ「アーバン クルーザー」(画像:トヨタ)

 

2024年12月にトヨタの欧州法人が世界初公開した新型EV「アーバン クルーザー」5)は、スズキ「eビターラ」のトヨタ版(OEM)となるコンパクトSUVです。2023年発表の「アーバンSUVコンセプト」のスタイリングをほぼそのまま受け継いでいます。

ボディサイズはトヨタのガソリン車「ヤリスクロス」より少し大きい程度ですが、ホイールベースは同車より140mmも長く、それによって広い室内空間を実現。リアシートは40:20:40で分割して折りたたむことが可能で、リクライニング機能も備えています。

モデルラインナップは、バッテリー容量49kWhと61kWhの前輪駆動モデル、バッテリー容量61kWhの4WDモデルの3種類。2024年12月時点で日本発売のアナウンスはまだありません。

なお、トヨタでは、広州汽車との合弁会社である「広汽トヨタ」が製造・販売する「bZ3X」6)、第一汽車との合弁会社「一汽トヨタ」が製造・販売を担い、開発にはBYDも参画した「bZ3C」6)などの新型EVも、2025年もしくは2026年に中国で発売される予定です。

 

トヨタbZ3C

トヨタ「bZ3C」(画像:トヨタ)

 

ただし、すでに国内で販売されている「bZ4X」がグローバルモデルであるのに対し、「bZ3X」「bZ3C」はいずれも中国専用モデルとされており、2024年12月時点で日本導入は未定です。

 

 

Ⅳ.ホンダ「Honda 0」シリーズ

ホンダHonda 0シリーズコンセプトモデルSALOON

ホンダ「Honda 0シリーズ」コンセプトモデル「SALOON」(画像:ホンダ)

 

グローバルなフラッグシップEVシリーズとして、ホンダが2024年1月に発表したのが「Honda 0(ゼロ)シリーズ」です7)。2026年に北米市場で発売されるのを皮切りに、日本、アジア、欧州など世界各地域で順次販売が開始される計画となっています。

「Honda 0シリーズ」のフラッグシップモデルとなるコンセプトモデル「SALOON(サルーン)」は、軽量化と低全高による低い空気抵抗、高効率化による走行抵抗の低減などによって、あえて小型の駆動用バッテリーを搭載しながら300マイル(約483km)以上の航続距離を目指すというコンセプトのEVです。

 

Honda 0シリーズコンセプトモデルSALOON

ホンダ「Honda 0シリーズ」コンセプトモデル「SALOON」(画像:ホンダ)

 

ご覧のように、その独創的なデザインは、どこか1970〜80年代に人気を集めたスーパーカー、ランボルギーニ「カウンタック」を彷彿とさせますが、2026年にほぼこのままの形で発売されるそうです。 

ホンダは、2023年に電動事業のさらなる強化と加速を図るための組織「電動事業開発本部」を新設しており、原点に立ち返ってゼロから新たなものを生み出すという意気込みを表明しています。

 

 

Ⅴ.ホンダ「N-ONE」EVモデル

ホンダN-ONEの特別仕様車STYLE+URBAN

ホンダ「N-ONE」の特別仕様車「STYLE+URBAN」(画像:ホンダ)

 

さらに、ホンダは国内市場に向けて、セミトールワゴンタイプの軽自動車「N-ONE」をベースにしたEVを2025年に、SUVタイプのコンパクトEVを2026年にそれぞれ発売するとしています8)

 

 

Ⅵ.レクサス「LF-ZC」

レクサスLF-ZC

レクサス「LF-ZC」(画像:トヨタ)

 

トヨタがEVでの遅れを取り戻すべく2023年に立ち上げた専任組織「BEVファクトリー」による第一弾モデルが、2026年もしくは2027年にレクサスブランドから発売される予定の「LF-ZC」です9)

トヨタ流のギガキャストを採用した新たなEV専用プラットフォームにより、低フロアとCd値0.2以下を実現し、トヨタが「次世代電池パフォーマンス版(角形)」と呼ぶ角形セルのリチウムイオン電池を用いることで航続距離1000kmを実現するそうです。

 

レクサスLF-ZC

レクサス「LF-ZC」(画像:トヨタ)

 

また、トヨタの新しいソフトウェアプラットフォーム「Arene(アリーン)」に対応し、次世代HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)「デジタライズド・インテリジェント・コックピット」を搭載し、SDV時代のパーソナライズされたユーザー体験が得られるとしています。

「LF-ZC」は新機軸をこれでもかというほど盛り込み、トヨタが全集中してつくる超本気の一台といえるでしょう。HEV(ハイブリッド車)で世界を席巻したトヨタが、EVで再び世界を驚かせることができるのか、トヨタの今後10年を占う重要な一台です。

 

 

 

【輸入車編】2025年以降に発売される新型EV


2025年以降の発売が予定される、もしくは発売が期待される輸入車の新型EVは、2024年12月時点で7〜9車種程度あります。

 

以下、メーカーを50音順で表示しています。

 

Ⅰ. ZEEKR「X」

ZEEKR X

ZEEKR「X」(画像:ZEEKR)

 

中国のEVブランド、ZEEKR(ジーカー)は2025年に日本市場に進出することを表明しています。その第一弾モデルとなるのが全長約4.5mのミドルサイズSUV「X」です10)

ZEEKRは中国の民営系自動車メーカー大手「吉利(ジーリー)汽車」の傘下にあり、同じグループにスウェーデン発祥の自動車ブランドのボルボを抱えています。ZEEKRとボルボはプラットフォームを共有するなど開発面で協力関係にあり、「X」は日本でも販売されているボルボ「EX30」とプラットフォームを共有しています。

本国では後輪駆動モデルと4WDモデルの2グレードが用意されており、いずれもバッテリー容量は66kWhとなっています。

 

 

Ⅱ. ZEEKR「009」

ZEEKR 009

ZEEKR「009」(画像:ZEEKR)

 

ZEEKRの日本上陸に合わせて導入されるのはSUVの「X」だけではありません。ミニバンの「009」11)も販売を開始します。

「009」は全長約5.2mの大型ミニバンで、トヨタ「アルファード」よりもひと回り大きなサイズとなります。SUVの「X」がそうであるように、こちらもボルボのフラッグシップミニバン「EM90」(日本未導入)とプラットフォームを共有しています。

0-100km/hを4.5秒で加速する高性能パワートレインを搭載し、バッテリー容量は140kWh。中国独自のテスト基準にもとづいた走行モード「CLTC」では航続距離が822kmに達するとしています。

 

 

Ⅲ.テスラ「サイバーキャブ」

テスラ サイバーキャブ

テスラ「サイバーキャブ」(画像:テスラ)

 

テスラが2024年10月に米カリフォルニア州で発表した注目の新型EVも紹介しましょう。その新型EVとは「サイバーキャブ」と呼ばれる完全自動運転の2人乗り2ドアセダンです12)

「サイバーキャブ」はハンドルもペダルもない設計で、充電も充電ケーブルを差し込むのではなく、ワイヤレス充電で行います。価格は2万5000ドル(約375万円)で、2026年には量産態勢に入ると確信している、とイーロン・マスク氏は言及しています。

なお、テスラは2024年度第3四半期の決算説明会において、2025年の前半に“低価格EV”の生産を開始する計画を明らかにしましたが、この新型EVは以前に計画していた通称「モデル2」とは別のモデルになる見込みです。価格や性能は2024年12月時点で明らかになっておらず、日本導入計画についても不明です。

 

 

Ⅳ. BMW「ノイエ・クラッセ」

BMWビジョン・ノイエ・クラッセ X

BMW「ビジョン・ノイエ・クラッセ X」(画像:BMW)

 

「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」は「新たなクラス」を意味するドイツ語で、1960年代に大成功を収めたミドルセダン「1800」に由来するBMWの次世代EVシリーズの名称です。

セダンの「ビジョン・ノイエ・クラッセ」13)とSUVの「ビジョン・ノイエ・クラッセ X」14)という2つのコンセプト車両が発表されており、いずれもBMWのラインナップに加わる予定です。

 

BMWビジョン・ノイエ・クラッセ

BMW「ビジョン・ノイエ・クラッセ」(画像:BMW)

 

パワートレインには第6世代BMW eDriveテクノロジーが採用され、従来に比べて体積エネルギー密度が20%向上した円形リチウムイオン電池を搭載。これを800Vに移行したシステムと組み合わせることにより、300kmの航続距離に必要な電気をわずか10分で充電することが可能になったとしています。

すでにSUVの「ノイエ・クラッセ X」はハンガリーのデブレツェン工場でテスト車両の生産がスタートしており、2025年後半に本格生産が開始される予定です。なお、このデブレツェン工場は、BMWグループの製造拠点のなかで化石燃料以外のエネルギーだけで稼働する初めての工場になるとされています。

 

 

Ⅴ.ヒョンデ「インスター」

ヒョンデ インスター

ヒョンデ「インスター」(画像:ヒョンデ)

 

EV普及にはコンパクトな低価格モデルが欠かせませんが、ヒョンデが2025年春に日本導入を発表した「インスター」15)は、ホンダ「フィット」や日産「ノート」よりひと回り小さい全長約3.8mのコンパクトさで、まさに日本向きのEVといえるでしょう。

現地の仕様では、バッテリー容量は42kWhと49kWhの2種類が用意されており、後者の航続距離は355km(WLTPモード)とされています。価格は300万円台前半までの価格帯となるようです。国内では軽EVが販売台数の半数近くを占めており、サイズ・価格ともにそれに近い「インスター」は人気を集めるかもしれません。

 

 

Ⅵ.フォルクスワーゲン「ID.2 ALL」

フォルクスワーゲンID.2 ALL

フォルクスワーゲン「ID.2 ALL」(画像:フォルクスワーゲン)

 

フォルクスワーゲンのEVに与えられる「ID.」の名を冠した最小モデルとして、2025年に発表、2026年の発売を予定しているのが「ID.2 ALL」です16)。欧州でのEV普及に欠かせないコンパクトEVの切り札として開発され、小型ハッチバック「ポロ」と同等のサイズながら、「ゴルフ」なみの室内空間を実現したとしています。

公式資料にバッテリー容量は記載されていませんが、急速充電では約20分で容量の10〜80%まで充電可能としており、航続距離は約450km(WLTPモード)です。価格は2万5000ユーロ(約400万円)未満が目標とされています。

 

 

Ⅶ.フォルクスワーゲン「ID. Buzz」

フォルクスワーゲンID. Buzz

フォルクスワーゲン「ID. Buzz」(画像:フォルクスワーゲン)

 

フォルクスワーゲンからはもう一台、注目の新型EVが日本に導入されます。かつて「ワーゲンバス」の愛称で親しまれた「Type Ⅱ」のイメージを落とし込んだEVミニバン「ID. Buzz」です。

すでに米国市場向けモデルの車両価格やスペックが発表されており、それによると、もっとも価格が安いのがバッテリー容量91kWhの後輪駆動モデルで5万9995ドル(約900万円)〜。航続距離は後輪駆動で約376km(EPA推定値)となっています17)

 

フォルクスワーゲンID. Buzz

フォルクスワーゲン「ID. Buzz」(画像:フォルクスワーゲン)

 

なお、コンセプトモデルが発表された当初は乗車定員5名の2列シートのみでしたが、3列シートのロングホイールベースも設定されています。日本での発売は2025年前半が予定されていますが、車両価格や導入モデルはまだ未定とのことです。

 

 

Ⅷ.メルセデス・ベンツ「CLA」

メルセデス・ベンツコンセプトCLAクラス

メルセデス・ベンツ「コンセプトCLAクラス」(画像:メルセデス・ベンツ)

 

メルセデス・ベンツは「IAAモビリティ2023」で公開された「コンセプトCLAクラス」をスタディモデルとする新型「CLA」18)を2025年に発売するとしています。

メルセデス・ベンツの第2世代EVの第一弾となるモデルで、「MMA」と呼ばれる新たなプラットフォームはEV専用ではなく、米国や欧州市場でのEV減速を受けて、HEV(ハイブリッド車)との併用プラットフォームとして設計されました。

それと同時に、新型「CLA」はSDV時代を見据えてゾーンコントロールアーキテクチャーを採用し、メルセデス・ベンツの車載OS「MB.OS」と、それによって実現するAI対応HMI「MBUXバーチャルアシスタント」を搭載する最初のモデルともなっています。 

 

メルセデス・ベンツコンセプトCLAクラス

メルセデス・ベンツ「コンセプトCLAクラス」(画像:メルセデス・ベンツ)

 

トヨタやホンダと同じように、メルセデス・ベンツもテスラや中国のEVベンチャーに対する遅れを取り戻すべく、ゼロベースで新たなEVの開発に取り組んでいます。新型「CLA」はそれを象徴する一台といえるでしょう。 なお、日本導入計画は不明です。

 

 

 

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2025年以降に登場するEVの進化と価格帯

今回紹介した新型EVを含め、2025年以降に発売される新型EVにはどのような進化が見られるのでしょうか。予想される価格帯と併せてこれから登場するEVの技術進化の一部を紹介します。

 

ガソリン給油と変わらない「1秒1km」の超高速充電

スーパーチャージャーで充電するテスラ車など

スーパーチャージャー(NACS)で充電するテスラ車など(画像:テスラ)

 

「1秒1km」とは、中国で使われている超高速充電を示すキャッチコピーで、1秒で1km走行分を充電できるという意味です。つまり、10分で600km走行分を充電できる計算になります。

日本で主流となっている出力50kWの充電器の場合、30分で150〜200km走行分の電気が充電されますから、その10倍ほどの充電スピードです。ここまで充電スピードが速いと、もはやガソリンを給油する所要時間とあまり変わらない水準です。 

EVの普及率が高い中国では近年、充電スピードが重要視されるようになっています。充電スピードが速ければ待ち時間のストレスが減り、充電渋滞も解消し、EVの“七難を隠す”からです。 

中国では、このような高い充電性能をもつEVが通常のカタログモデルとして販売されています。また、車両の充電性能に対応する充電インフラも非常に発達しており、都市部では出力360kW前後の充電器が数km圏内に点在します。

一方で、超急速充電はバッテリーセルの早期劣化を招くともいわれますが、たとえば、中国の民営系バッテリーメーカー最大手であるCATL(寧徳時代新能源科技)は、セルごとに温度を厳密に管理・冷却する技術で劣化を最小限に抑えているようです。

 

 

次世代EVは小型化とともに価格帯も下がっていく

ヒョンデ インスター

300万円台前半になる見込みのヒョンデ「インスター」(画像:ヒョンデ)

 

駆動用バッテリーやプラットフォーム技術が進化するにしたがって、コンパクトなボディでも十分な居住性を確保した小型のEVをつくるための技術的な蓄積が進んでいます。 

バッテリー容量と航続距離の関係については、いまだにゲームチェンジの兆しは見えませんが、一方で車両の充電スピードは速くなってきているがゆえに、「バッテリー容量が小さく航続距離が短い」というデメリットが薄れつつあります。 

こういった背景から、今後はEVそのものの車両価格が下がるというより、バッテリー容量が小さくてサイズもコンパクトな小型のEVがつくられるようになり、相対的に車両価格が安いモデルが増えることになりそうです。

具体的には、普通車のEVの場合、現在は価格が600万円以上するミドルクラス以上のモデルが多くを占めていますが、300〜400万円台のコンパクトなEVが徐々に登場してくる見込みです。

 

 

日独メーカーがプライドをかけて開発する新型EVに期待

2025年以降は、日本やドイツの自動車メーカーがゼロからつくり上げた次世代のEVが続々と登場することになります。先行するテスラや中国のEV専業メーカーに追いつき追い越せるのか? ここまで散々悔しい思いをしてきたはずのレガシー自動車メーカーが、プライドをかけて開発するEVがどこまで巻き返すことができるのでしょうか。ぜひ期待したいところです。

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

この記事の著者
佐藤 耕一
佐藤 耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT業界に転じて自動車メーカー向けビジネス開発に従事。2017年ライターとして独立。自動車メディアとIT業界での経験を活かし、CASE領域・EV関連動向を中心に取材・動画制作・レポート/コンサル活動を行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。