
ホンダではすでに軽商用EVの「N-VAN e:」を販売していましたが、第2弾として「N-ONE e:」を送り出しました。「e:Daily Partner(イー デイリー パートナー)」をグランドコンセプトに、幅広いユーザーに支持されるスタンダードなEVとして、日々の暮らしを生き生きと活発にしてくれる“日常のパートナー”となることを目指した軽乗用EVです。岡本幸一郎さんがレポートします。
軽自動車界でも電動化の波がだんだんと押し寄せている。ジャパンモビリティショー2025では、国内外の多くが軽自動車のEVやHEVを出展していた。そのうちの大半はやがて世に出てくるに違いない。
軽自動車のEVで先陣を切ったのは三菱だった。それからだいぶ時間が経過した2022年に日産と三菱の合弁会社であるNMKVが送り出した軽自動車のEVは大いに話題となり、航続距離が短くても軽自動車規格のEVというマーケットが小さくないことを証明した。そこに加わったニューカマーが、「N-ONE e:」だ。
航続距離295kmのために選ばれたベースは、N-ONE
ホンダはすでに、「N-VAN e:」という軽商用EVを販売している。また、それよりも前から「ホンダe」という軽自動車をひとまわりほど大きくしたようなサイズ感の小型EVも市販化していた。日本では伸び悩んだものの、ヨーロッパの一部ではけっこう売れたらしい。しかし、当時からちらほら聞こえてきた、どうせならN-ONEをEVにすればよかったのにという声が、本当にそのとおりになったわけだ。
軽自動車界で売れ筋といえば、絶対的な存在であるN-BOXがある。それなら、N-BOXをEVにしたほうが売れるのにというのは誰もが考えるはず。ところがホンダはそうしなかった。まあ、N-VAN e:というキャラのかぶるクルマがすでに存在することもあるだろうが、最大の目的は、航続距離を最大化するため、また立体駐車場に駐車可能となることも考慮し、白羽の矢が立てられたのはユニークなデザインが特長の軽ハイトワゴン、N-ONEだった。

N-VAN e:と基本的にモーターやバッテリーなどパワートレーンは共通ながら、より軽量で空力にも優れることから、WLTCモード航続距離は50km増となる295kmを達成した。この数字は先発のNMKV勢のハイトワゴンを実に115kmも上回っている。
大人4人が快適に過ごせて使い勝手もいい、パッケージングの妙

それでいて狭くて不便なのかと思いきや、そんなこともない。エンジン車のN-ONEだって小さいながらも大人4人がそれほど大きな不満を感じることなく乗れる車内の広さは確保されているのだから、床下に薄型化したバッテリーを積んだぐらいでそれが大きく変わることはない。フロアが微妙に高くなっているぐらいだ。そのあたりには、ホンダのパッケージングの基本思想である「M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想」が生かされている。

使い勝手においても、リアシートをダイブダウンして荷室とつながったフラットなスペースを作り出したり、チップアップ機構により座面をはね上げて背の高い荷物を後席のスペースに積み込めたりといった、N-ONEと同じようにシートアレンジできるようになっている。

荷室のアンダーフロアボックスの広さも確保されていて、充電ケーブルを入れても十分すぎるほど余裕がある。

シンプルにまとめられたインテリアにはリサイクル素材が積極的に活用されている。ディスプレイには、パワーメーターやパワーフロー、バッテリーの温度、航続可能距離がエアコンオフにすると何km増えるといったEVならではの情報が表示されるようになっている。
加減速がスムーズで、とにかく乗りやすいフィーリング

グレード体系はシンプルな2種類で、試乗した上級の「e: L」は装備が充実していて、9インチHonda CONNECT ディスプレイ(ナビゲーション連動)が標準装備されるほか、エントリーの「e: G」とは急速充電機能の標準装備という大きな違いもある。

外見はN-ONEと共通のイメージながら、顔つきの印象だけでなくボンネットやフェンダー、テールゲートの形状など全体的に微妙に作り変えられている。廃棄されたホンダ車のバンパーをリサイクルした「バンパーリサイクル材」を用いたというフロントグリルに充電口が配置されているのは、充電しながらでも乗り降りがしやすいようにするため。

バッテリー冷却・加温システムにより夏や冬でも航続距離・充電時間が安定するほか、最大1500Wまで出力が可能なAC外部給電器(V2L)やV2Hなど、EVならではの暮らしに役立つ便利な機能もしっかり備えている。

ドライブすると、とにかく乗りやすい。軽自動車なのでもちろん取り回しはバツグンによく、乗り心地もよいうえ、動きが素直で、何も気にすることなく乗れる。もともと重心が高くないN-ONEの強みに加えて、バッテリーを車体の中心近くの低い位置に搭載していることもハンドリングのよさに効いているに違いない。

扱いやすさを優先して加速はあえて控えめにされていて出足はおだやかだが、多少の上り勾配だろうとアクセルを操作したとおり平地と同じように加速がリニアに立ち上がるので物足りなさも感じない。EVの強みである静粛性も高く、登坂時にエンジンがうなりをあげることももちろんない。

減速のほうも、効率良く電気を回収する電動サーボブレーキにより自然なフィーリングを実現していて、スムーズで扱いやすい。ホンダが軽乗用車に初めて採用したという「シングルペダルコントロール」もちょうどよいさじ加減で、アクセルペダルだけで加速して減速して完全停車するまで思ったとおりに走らせることができる。
日常のパートナーとして、これ以上ないほどの一台に仕上がった

電費についても、撮影した際はときどき強めの加速を試したにもかかわらず7.5km/kWhと良好だった。EVにとってはなおのこと、やはり軽さは正義だとつくづく感じた次第である。

小さくてカワイくて、利便性も航続距離も日常使いには十分すぎるほど確保されていて、いざとなれば電源としても活用できる。まさしくホンダが訴求しているとおり、ユーザーの移動と暮らしを支え、何気ない毎日を生き生きと活発なものにする“日常のパートナー”として、これ以上のクルマはなかなかないと乗っているうちにどんどん思えてきた。
撮影:宮越 孝政
N-ONE e: L
| 全長×全幅×全高 | 3395mm×1475mm×1545mm |
| ホイールベース | 2520mm |
| 車両重量 | 1030kg |
| 最小回転半径 | 4.5m |
| モーター種類 | 交流同期式 |
| 最高出力 | 47kW(64ps) |
| 最大トルク | 162Nm(16.5kgfm) |
| バッテリー種類 | リチウムイオン |
| バッテリー総電圧 | 358V |
| バッテリー総電力量 | 29.6kWh |
| 一充電走行距離 | 295km |
| 電費(交流電力量消費率) | 105Wh/km |
| 駆動方式 | FWD |
| サスペンション | 前:マクファーソン式,後:車軸式 |
| タイヤサイズ | 155/65R14 |
| 税込車両価格 | 319万8800円 |
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