電気自動車(EV)はこれから本格的に普及する段階にあり、まだそれほど車種は多くありません。しかし、EVに乗るなら、やはり自分好みのスタイルの車を選びたいものです。なかでも気になるのは、エンジン車において高い人気を集める「SUV」でしょう。EVにはどんな種類のSUVがあるのでしょうか。2021年8月現在、日本で購入できるSUVタイプのEVを紹介します。
- EVのSUVって少ないの? 2021年の概況を解説!
- 【国産・輸入車】EVのSUVラインナップ
- どうやって選ぶ? EVのSUV選びのポイントとは
- 今後、SUVタイプは増える見込み。楽しんで車種を選ぼう
EVのSUVって少ないの? 2021年の概況を解説!
SUVは「スポーツ・ユーティリティー・ビークル」の略で、さまざまな用途に応える多目的車のことです。ミニバンやワゴン車のように広々とした室内と荷室をもっていて、日常利用の使い勝手がいいことから、非常に高い人気を集めています。
しかし、電気自動車(EV)全体の車種がそれほど多くないため、EVのSUVもまだまだ数が少ないのが実情です。まずは2021年現在の「EVのSUV」の概況を見ていきましょう。
EVのSUVは今後増えていく
2021年8月現在、国産メーカーが販売しているSUVタイプのEVは、数車種しかありません。しかし、欧州ではSUVが乗用車の主流になりつつあり、輸入車ではSUVタイプのEVが増えています。
また、トヨタがスバルと共同開発した新しいSUVタイプのEV「bZ4X」のコンセプトカーを発表するなど、今後は日本の車メーカーからもSUVが続々と登場することが予想されています。
エンジン車からEVへの転換が進むにしたがって、来年、再来年と、さまざまなメーカーからSUVタイプのEVが販売されるのは間違いなさそうです。
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EVのSUVならではのメリットとは?
EVのSUVが今後増えていくと予想されるのは、SUVの人気が高いためだけではありません。車自体の仕組みとして、もともと「EV」と「SUV」は相性がいいのです。
車高の高いSUVは、走行中の安定性ではセダンやハッチバックにやや劣ります。しかし、車高が高ければ、床下にバッテリーを搭載するスペースを確保することができます。重量が重たいバッテリーを床下に置くことで、車の重心が低くなり、それによって走行中の安定性を高めることができるというわけです。
また、SUVはハッチバックなどに比べて車体が大きく、より容量の大きなバッテリーを積むこともできます。大きなバッテリーを搭載する車は、航続距離(1回の充電で走行できる距離)が長くなることに加え、パワーを高める点でも有利です。このように、SUVタイプのEVにはさまざまなメリットがあります。
EVのSUVにも「2WD」と「4WD」がある
SUVは、山道などの悪路を走るためにつくられた4WD(4輪駆動)のオフロード車を日常利用に適した形に進化させたものです。ただし、街乗りをメインとしたSUVも多いため、2WD(2輪駆動)だけの車種も少なくありません。
現在販売されているSUVタイプのEVにも「4WD」「2WD」の2種類があり、また、「4WD」「2WD」の両方を設定して購入者が選択できるようになっている車種もあります。
【国産・輸入車】EVのSUVラインナップ
2021年8月現在、EVのSUVにはどのような車種があるのでしょうか。日本で購入できる「国産車」「輸入車」に分けてそれぞれ紹介します。
以下、メーカーを50音順で表示しています。
Ⅰ.EVのSUV[国産車編]
日本の車メーカーが販売するSUVタイプのEVは現在、2022年発売予定のものを含めて5種あります。
ⅰ.日産「アリア」
日産のEVといえば「リーフ」が有名ですが、「アリア」1)は専用の新しいプラットフォーム(シャーシなどの車の骨格部分)を採用したSUVタイプのEVです。66kWhと91kWhの2種類のバッテリー容量、さらに2WDと4WDの2つの駆動方式が選べます。
2021年6月から注文を受付している「リミテッド」は上級アイテムを装備するモデルですが、あとから発売されるレギュラーモデルは500万円台と、手の届きやすい価格となる見込みです。
ボディサイズ | 全長4595mm×全幅1850mm×全高1665mm |
駆動方式 | 2WD(FF)/4WD |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 66kWh/91kWh |
航続距離 | 最大450km〜(日産社内測定値) |
価格 | 660万円〜(リミテッドの場合) |
ⅱ.マツダ「MX-30 EV MODEL」
マツダ「MX-30 EV MODEL」2)は、小さな観音開き式のリアドアを採用するなど、非常にスタイリッシュかつユニークなレイアウトをもつSUVタイプのEVです。
最大の特徴は、車重が重くなり、車両価格も高くなりがちな大容量のバッテリーを搭載せず、容量35.5kWhのバッテリーを積んでいること。通勤や買い物など、主に日常利用をする人に向いている車と言えるかもしれません。
ボディサイズ | 全長4395mm×全幅1795mm×全高1565 mm |
駆動方式 | 2WD(FF) |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 35.5kWh |
航続距離 | 256km(WLTCモード) |
価格 | 451万円〜 |
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ⅲ.レクサス「UX300e」
レクサスには「大きい車」というイメージがあるかもしれませんが、「UX300e」3)は非常にコンパクトなサイズのSUVタイプのEVです。日常利用の際に取り回しがしやすく、全高1550mm以下に抑えられているので都市部の立体駐車場にも対応します。
また、ボディカラーやインテリアカラー、オプションなどの選択肢が多いのもラグジュアリーブランドのレクサスならではでしょう。
ボディサイズ | 全長4495mm×全幅1840mm×全高1540mm |
駆動方式 | 2WD(FF) |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 54.4kWh |
航続距離 | 367km(WLTCモード) |
価格 | 580万円〜 |
[番外]トヨタ「bZ4X」/スバル「ソルテラ」
トヨタとスバルはEVを共同開発しています。2021年8月現在、発表されているのがトヨタの「bZ4X」4)と、スバルの「ソルテラ」5)です。バッテリー容量などの詳しい内容はまだ発表されていませんが、「bZ4X」はより長い航続距離を確保するためソーラー充電システムが採用されているのが特徴です。発売時期は、ともに2022年半ばの予定です。
参考資料
1)日産「アリア」
2)マツダ「MX-30 EV MODEL」
3)レクサス「UX300e」
4)トヨタ「トヨタ、電動車のフルラインアップ化の一環として新EVシリーズ「TOYOTA bZ」を発表」
5)スバル「SUBARU 2022年に発売する新型EVの名称を「SOLTERRA(ソルテラ)」に決定」
Ⅱ.EVのSUV[輸入車編]
2021年8月現在、海外の車メーカーが日本で販売しているSUVタイプのEVは国産車よりも車種が豊富で、大きく分けて8車種あります。
ⅰ.アウディ「e-tron」
アウディのEVは「e-tron」6)シリーズとして販売されています。SUVタイプは、大きく分けて「e-tron」と、よりスタイリッシュな「e-tronスポーツバック」の2車種があり、それぞれの高性能モデルを合わせると4車種がラインナップされています。
「e-tron」シリーズは「アダプティブエアサスペンション」と呼ばれる先進技術を全車に標準装備し、オプションでカメラ式ドアミラーの「バーチャルエクステリアミラー」も装着できるなど、プレミアムブランドらしい上級装備を備えているのが特徴です。
ボディサイズ | 全長4900mm×全幅1935mm×全高1630mm |
駆動方式 | 4WD |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 71kWh |
航続距離 | 335km(WLTCモード) |
価格 | 933万円〜 |
※「e-tron」のスペックです。
ⅱ.ジャガー「I-PACE」
ジャガー「I-PACE」7)は、SUVタイプのEVでありながら車体後部がなめらかな曲線を描き、一見するとクーペのような外観をもっています。これは「SUVクーペ」と呼ばれるスタイルです。
スタイリッシュな分だけ、ほかのSUVタイプのEVより室内や荷室がやや狭くなっており、「デザインのよさ」「スポーティな走り」を求める人に向いている車種といえるかもしれません。
ボディサイズ | 全長4695mm×全幅1895mm×全高1565 mm |
駆動方式 | 4WD |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 90kWh |
航続距離 | 438km(WLTCモード) |
価格 | 1005万円〜 |
ⅲ.テスラ「モデルX」
米国のシリコンバレーを本拠地とする新興EVメーカーのテスラの車は、運転席のスイッチ類がほとんどなく、操作の大半が大きなタッチパネルに集約されるなど、非常に先進的なのが特徴です。「ファルコンウィングドア」と呼ばれるリアドアは横ではなくスーパーカー顔負けに上に開きます。
「モデルX」8)はSUVタイプでありながらレーシングカーのような加速性能を備えており、また、オプションで「3列シート」が選べるのも特徴です。ただし、3列目はやや狭いので、子ども用、荷物用あるいは緊急用と考えておいたほうがいいかもしれません。
ボディサイズ | 全長5,036 x 全幅1,999 x 全高1,684mm |
駆動方式 | 4WD |
乗車定員 | 5〜7名(オプション含む) |
バッテリー容量 | 非公表 |
航続距離 | 547km(推定)~ |
価格 | 1269万9000円〜 (2021年8月13日現在) |
ⅳ.プジョー「e-2008」
プジョー「e-2008」9)は、430万円台という価格帯を考えると、いま日本で購入できるSUVタイプのEVのなかでもっとも身近な車です。デザインや装備が同じガソリン車も販売されています。
価格はEVのほうが約130万円高くなっていますが、EVは「購入時に補助金が活用できる」「ガソリン車よりランニングコストを抑えることができる」ということを考えると、ガソリン車よりコストが安くなることもあり得るでしょう。
ボディサイズ | 全長4305mm×全幅1770mm×全高1550mm |
駆動方式 | 2WD(FF) |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 50kWh |
航続距離 | 360km(WLTCモード) |
価格 | 433万2000円〜 |
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ⅴ.DSオートモビル「DS 3 クロスバック E-TENSE」
DSオートモビルはプジョー、シトロエンと同じ企業グループに属し、フランスの文化を自動車で表現するブランドとして誕生しました。都会的でラグジュアリーなデザインを特徴としています。
「DS 3 クロスバック E-TENSE」10)はプジョー「e-2008」と基本的なプラットフォームを共有しているコンパクトSUVのEVです。ただし、デザインはよりラグジュアリーで、とくにホワイトレザー仕上げの内装はハイブランドのアパレルを彷彿とさせます。
ボディサイズ | 全長4120mm×全幅1790mm×全高1550mm |
駆動方式 | 2WD(FF) |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 50kWh |
航続距離 | 398km(JC08モード) |
価格 | 534万円〜 |
ⅵ.ポルシェ「タイカン クロスツーリスモ」
スポーツカーブランドのポルシェにとって初のEVとなる「タイカン」のクロスオーバーSUVモデルとして登場したのが「タイカン クロスツーリスモ」11)です。クロスオーバーとは、SUVのなかでも舗装道路に重点を置いた乗用車に近い車種のことです。
「タイカン クロスツーリスモ」は、単に「タイカン」の外観をSUVテイストにしただけでなく、車体後部の形状を変更して荷室を拡大し、名実ともにSUVに仕上げているのが特徴です。
ボディサイズ | 全長4974mm×全幅1967mm× 全高1409mm(Turbo:1412mm) |
駆動方式 | 4WD |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 93.4kWh |
航続距離 | 388km~(WLTPモード) |
価格 | 1341万円〜 |
ⅶ.メルセデス・ベンツ「EQA」「EQC」
「Mercedes-EQ」はメルセデス・ベンツのEVシリーズの名称で、「A」は車格を表しています。その名が示す通り、「EQA」12)はメルセデス・ベンツのなかでもっともコンパクトな車体と手ごろな価格のSUVタイプのEVです。国内では、この「EQA」と、ひと回り車体が大きい「EQC」13)の2車種が販売されています。
「EQA」「EQC」はシームレスで近未来的なデザインでありながら、操作性・取り回しは、既存の内燃モデルに慣れ親しんだ人でも違和感なく扱えるものとなっています。
●EQA ※すべて欧州参考値
ボディサイズ | 全長4465mm×全幅1835mm×全高1625mm |
駆動方式 | 2WD(FF) |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 66.5kWh |
航続距離 | - |
価格 | 640万円〜 |
●EQC
ボディサイズ | 全長4770mm×全幅1885mm×全高1625mm |
駆動方式 | 4WD |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 80kWh |
航続距離 | 400km(WLTCモード) |
価格 | 895万円〜 |
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ⅷ.BMW「iX」
BMWはEVを「i」シリーズとして展開しています。「iX」14)はシリーズ初のSUVとなる車種で、日本発売は2021年秋ごろを予定。2021年8月現在、注文を受け付けている段階です。
そのため、当初販売される車種はいずれもオプションのパッケージを装備した導入記念モデルで、やや高い価格帯となっています。レギュラーモデルが発売されれば、もう少し手ごろな価格で購入することができるようになるでしょう。
ボディサイズ | 全長4953mm×全幅1967mm×全高1695mm |
駆動方式 | 4WD |
乗車定員 | 5名 |
バッテリー容量 | 76.6kWh/111.5kWh |
航続距離 | 425km~(WLTPモード) |
価格 | 1155万円〜(導入記念モデル) |
※データは導入記念モデル。
参考資料
6)アウディ「e-tron」
7)ジャガー「ジャガーの新しい電気自動車 I‑PACE」
8)テスラ「Model X」
9)プジョー「e-2008」
10)DSオートモビル「DS 3 CROSSBACK E-TENSE」
11)ポルシェ「Taycan 4 Cross Turismo」
12)メルセデス・ベンツ「The EQA」
13)メルセデス・ベンツ「The EQC」
14)BMW「THE iX」
どうやって選ぶ? EVのSUV選びのポイントとは
2021年8月現在、SUVタイプのEVの種類はあまり多くないため、予算によって購入できる車種がほぼ決まります。
たとえば、補助金を加味しないで、予算が400万円台までの場合、マツダ「MX-30 EV MODEL」かプジョー「e-2008」の二択になります。予算500〜600万円台の場合は、レクサス「UX300e」、メルセデス・ベンツ「EQA」、DSオートモビル「DS 3 クロスバック E-TENSE」、そしてまもなく発売される日産「アリア」の4車種です。
また、1000万円以上の予算があるなら、アウディ「e-tron」やジャガー「I-PACE」、テスラ「モデルX」などもう少し幅広く選べることになります。
ただし、予算の制限がない状態でEVのSUVを選ぶなら、次のようなポイントを基準に選びましょう。
ポイント① バッテリー容量
EVの特徴のひとつと言えるのが、やはりバッテリーです。EVのSUVは、比較的バッテリー容量が大きい車種が多いので、日常使いとしては問題ないでしょう。あとは、ロングドライブをよくするかどうか、というライフスタイルとの相性を基準にしてもいいかもしれません。
なお、バッテリー容量によってグレードが異なる車種もあります。ガソリン車の場合、装備でグレードを選ぶところですが、EVはバッテリー容量に注目しましょう。
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ポイント② 駆動方式
雪深い地域など悪路が多い地域に住んでいる場合、あるいは週末に悪路が多い地域に行くことが多い場合、「4WD」であるかどうかも重要なポイントです。SUVはオフロード車を原点とする車ですが、最近は日常利用の街乗りを考えてつくられていることもあり、「2WD」しか設定されていない車種もあるからです。
もし積雪地に住んでいるなら、4WDも設定されている日産「アリア」、あるいは価格は高くなりますが、アウディ「e-tron」やジャガー「I-PACE」、テスラ「モデルX」、BMW「iX」などを選んだほうがいいかもしれません。
メーカーによっては、販売方法が特殊な場合に注意
テスラ「モデルX」は、メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手も愛用しているSUVタイプのEVです。気になる人もいることでしょう。ただ、非常に先進的な新興EVブランドであるテスラは、ほかの車メーカーと違ってオンライン販売が中心です。
2021年8月現在、日本国内にある「テスラストア」と呼ばれる販売店は、東京・青山、神奈川・川崎、愛知・名古屋、大阪・心斎橋の4店舗しかありません。車を「オンラインで購入する」ことに抵抗があるかどうか、多少注意が必要なポイントとなるでしょう。
今後、SUVタイプは増える見込み。楽しんで車種を選ぼう
2021年現在、SUVタイプのEVはまだ車種が少なく、人によっては「これだ!」という1台が見つからないかもしれません。しかし、日本に比べてエンジン車からEVへのシフトが進んでいる欧州では、各セグメント(車のサイズ)の車種をEVに置き換える動きが加速しています。つまり、エンジンの代わりにモーターを付け替えるようなことが起き、車種がどんどん増えているのです。
この流れに乗る形で、今後は日本のメーカーもさまざまなSUVタイプのEVを発売していくかもしれません。また、ガソリン車に比べてEVの車両価格が高い原因となっているバッテリーの価格も、これからどんどん下がっていくと予想されます。
SUVタイプのEVを購入したいと思っている人は、いま販売されている車種を検討するとともに、これから販売される車種にもぜひ期待してください。
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