「エコキュート」は空気の熱でお湯を沸かす高効率な電気給湯機です。しかし、ガス給湯器と比較してどのような特徴があるのでしょうか? この記事では、エコキュートのメリット・デメリットを光熱費や設置費用、災害時の対応など、さまざまな観点からわかりやすく解説します。エコキュートの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
※この記事は2022年2月14日に公開した内容をアップデートしています。
そもそも、エコキュートとは?
まずはエコキュートに関する基礎知識をおさらいしましょう。
エコキュートとは、空気の熱を利用して、少ない電気で効率よくお湯を沸かすヒートポンプ給湯機のことです。圧縮されると温度が上がり、膨張すると温度が下がる冷媒(二酸化炭素〈CO2〉など)の性質を利用したヒートポンプ技術を使っています。
給湯機といえば、都市ガスやプロパンガスを燃焼させてお湯を沸かすものだというイメージを抱いている方もいるかもしれません。しかし、このヒートポンプ技術を利用して、非常に効率よくお湯を沸かすエコキュートは、省エネで地球にやさしいのです。
なお、エコキュートの仕組みやヒートポンプ技術について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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エコキュートのメリット
エコキュートには、ガス給湯器と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、エコキュートのおもなメリットを4つご紹介します。
①光熱費を削減できる
エコキュートは省エネな給湯機ですから、少ない電気で効率よくお湯を沸かすことができます。また、基本的に夜間の安い電気料金プランとセットで利用するため、電気代が安い時間帯にお湯を沸かし貯めておくことができます。つまり、従来の給湯器に比べて、光熱費の削減が期待できます。
では、どのくらいの光熱費の削減効果が見込めるのでしょうか?
東京電力エナジーパートナーが試算したところ、新築戸建住宅で家族4人の場合、ガス給湯器とエコキュートの給湯料金を比較すると、年間3万8300円も削減できるという結果が出ました1)。
〈図〉ガス給湯器とエコキュートの光熱費比較
【試算条件】
●建物条件:木造住宅 地上2階 4LDK 120.08㎡
●家族人数:4人
●断熱性能:住宅品確法断熱等性能等級 等級5相当(ZEH水準)
●地域区分:6地域(東京)
●電気料金:ガス併用住宅「スタンダードS(60A)」電化住宅「スマートライフL(10kVA)」
●都市ガス料金:「東京ガス 一般料金」(2023年4月1日実施料金)
●給湯機器:ガス併用住宅/潜熱回収型ガス給湯器、電化住宅/エコキュート(効率3.4)
●暖冷房機器:エアコン
●調理機器:ガス併用住宅/ガスコンロ、電化住宅/IHクッキングヒーター
●浴室乾燥暖房機:ガス併用住宅/ガス式、電化住宅/電気式
*燃料費調整額や原料費調整額、口座振替等の割引の適用状況、ご使用状況等によってはおトクにならない場合があります。
*年間料金は100円未満切り捨てとしています。
*電気料金には、再生可能エネルギー発電促進賦課金(2024年5月分から2025年4月分)を含みます。
*電気料金は2024年4月1日改定料金で試算しています。(電気料金には2024年5月分の燃料費調整額を含みます。)
*ガス料金は2023年4月1日実施料金で試算しています。(ガス料金には2024年5月分の原料費調整額を含みます。)
*国の電気・都市ガス料金軽減措置による値引きは含まれていません。
*東京電力エナジーパートナーのシミュレーションソフトにて試算しています。
*金額はすべて税込となります。
ちなみに、太陽光発電を導入している、またはこれから導入予定なら、太陽光でつくった電気を活用してお湯を沸かす「おひさまエコキュート」という製品の導入がおすすめです。
おひさまエコキュートに関してより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
②CO2の削減につながる
そもそも、太陽光などの再生可能エネルギーによる発電以外で電気をつくるときには、化石燃料の使用によりCO2が発生します。そのため、電気を使う量を減らせば、CO2の発生を抑えることができます。
空気の熱を利用し、少ない電気で効率よくお湯を沸かすエコキュートは、使用する電気エネルギーに対して、3倍以上の熱エネルギーを生み出します。このようにエネルギー効率がいいということは、二酸化炭素(CO2)の削減にもつながるのです。
また、前述のおひさまエコキュートを導入した場合、おもに太陽光で発電した電気でお湯を沸かすことになるため、ますますCO2削減に貢献することができます。エネルギーを効率よく利用できるエコキュートは、環境にやさしい機器だといえるのです。
③災害時でもお湯や水を使うことができる
エコキュートは、災害時にも役立ちます。災害による停電時でも貯湯タンクに貯めたお湯は使用できますし、断水時でも貯湯タンクから取り出して生活用水として利用できます。
〈図〉エコキュートの機器構成
一般的に3〜5人家族向けのエコキュートの場合、タンク内には370Lものお湯や水が常に貯められています。370Lといえば、浴槽の約2杯分に匹敵します。断水時にはそれを生活用水として利用することができるのです。
タンクに貯めたお湯・水なので飲用には適しませんが、排水設備に異常がなければ手洗いやトイレの水として使うには十分です。たっぷりの生活用水を備蓄できると考えるととても安心でしょう。
なお、停電時のエコキュートの使い方については、以下の記事をご参考ください。
④火災リスクを低減できる
エコキュートは、電気を利用してお湯を沸かす給湯機です。都市ガスやプロパンガスなどを燃やす構造ではないため、直接火が出ず火災リスクを低くすることができるでしょう。
もちろん、漏電やショートのリスクはありますが、ガス漏れや一酸化炭素中毒などの危険も少なくなるので、比較的安心して使えるというメリットもあります。
エコキュートのデメリット
一方、エコキュートには、どのようなデメリットがあるのでしょうか? おもなデメリットを5つご紹介します。
①初期費用が高い
エコキュートを導入する際のデメリットとして、最初に挙がることが多いのが初期費用の高さです。
従来型のガス給湯器と比較すると、エコキュートの本体価格は高いですし、設置工事もやや複雑になります。おもな設置工事は、貯湯タンクを据え付けるための基礎工事や電気工事などです。
ただし、前述のとおり、月々の光熱費は従来型のガス給湯器よりも大きく削減することができるため、初期費用分をランニングコストの低減分でカバーすることもできるでしょう。また、2024年11月現在、経済産業省は「給湯省エネ2024事業」2)として、省エネ性能の高い給湯機導入に対して補助金を交付しています。初期費用が気になる場合、このような補助金を活用するとよいでしょう。
なお、初期費用を軽減するための選択肢のひとつとして、エコキュートのリースサービスもあります。定額のサービス料を毎月支払うことで、エコキュートを利用できるというものです。東京電力グループのTEPCOホームテックでは一括購入できるのはもちろん、エコキュートのリースサービスも行っています。ご興味のある方は、ぜひ以下よりご覧ください。
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▶エコキュートの交換費用はいくら?相場や施工業者の選び方を徹底解説!
②一定の設置スペースが必要
エコキュートを設置するには、ヒートポンプユニットと貯湯タンクを設置するスペースが必要です。また、メンテナンススペースも確保する必要があります。設置スペースが限られている場合は、薄型(スリム)タイプの貯湯タンクを選ぶとよいでしょう。
③湯切れの心配がある
エコキュートは、貯湯タンクに貯めておいたお湯を使う方式のため、一度に短時間で大量のお湯を使った場合には、湯切れを起こす可能性があります。湯切れとは、貯湯タンクのお湯がなくなってしまい、お湯が使えなくなることです。
〈図〉エコキュートにおける湯切れの状態
ただし、多くのエコキュートには「自動沸き増し機能」などといった湯切れを防ぐ機能がついています。そのため、家族の人数やライフスタイルにあわせて適正なタンクの容量を選んでおけば、過度に不安視する必要はないでしょう。
なお、エコキュートの湯切れに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。解決法も紹介していますので、あわせてご覧ください。
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▶エコキュートの湯切れが起こる原因と解決法
④水圧が弱いことがある
エコキュートは、瞬間式のガス給湯器などと比べ、シャワーの出が悪いなど水圧が弱いと感じられる場合があります。これは、エコキュートが貯湯式であるため、水道水の圧力をそのまま利用できないことが原因です。とくに1階にエコキュートを設置し、2階でお湯を使用する場合などで水圧が弱いと感じることがあるかもしれません。
水圧が気になる場合は、給湯圧力がより強い高圧タイプや水道直圧タイプのエコキュートを選ぶとよいでしょう。
⑤使える入浴剤に制限がある
フルオートタイプのエコキュートでは、使用できる入浴剤に制限があります。入浴剤によっては、エコキュートの追いだき用の配管や熱交換器を傷める可能性があるためです。エコキュートに使える入浴剤は、取扱説明書などで確認しましょう。
太陽光発電があるなら「おひさまエコキュート」がおすすめ
ここまで、エコキュートのメリット・デメリットをご紹介しましたが、メリットをさらに高めたい場合は、おひさまエコキュートの導入を検討するとよいでしょう。
おひさまエコキュートは、おもに太陽光発電の電気を活用して、昼間にお湯を沸かす給湯機です。太陽光でつくったおトクな電気を活用(自家消費)できますし、夜間に比べて温かい昼間の空気を取り込むため、ヒートポンプの仕組み上、給湯効率も上がります。
また、お湯を利用するメインの時間帯は夜間になりますが、沸き上げから利用までの時間が短いため、放熱ロスが少なくタンク内のお湯が冷めずに効率的です。つまり、おひさまエコキュートは通常のエコキュートよりもさらに効率がよいため光熱費を大幅に削減することができるのです。
〈図〉おひさまエコキュートと通常のエコキュートの違い
なお、東京電力グループのTEPCOホームテックでは、太陽光発電やおひさまエコキュートなどを初期費用0円で導入することができるサービス「エネカリ」を提供しています。このサービスには、メンテナンスや保証もついているので維持コストを含めて将来の家計を計画的に設計することができます。
「エネカリ」について詳しく知りたい方は以下をクリックしてみてください。
ライフスタイルに合ったエコキュートでエコな暮らし
エコキュートは、光熱費の削減やCO2排出量の削減など、多くのメリットがあります。災害時にも役立つという点も大きな魅力です。一方で、初期費用や設置スペースなど、いくつかのデメリットもあります。エコキュートを導入する際は、メリットとデメリットを比較検討し、ご自身のライフスタイルに合った製品を選びましょう。
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