近年、大規模災害が毎年のように起こっており、備えを十分に行いたい方も増えているでしょう。そんな方に適している給湯機が「エコキュート」です。エコキュートは、光熱費削減効果だけでなく、災害時にも役に立ちます。この記事では、なぜエコキュート導入が災害対策になるのか、非常時にエコキュートのお湯を使う方法、停電後の復旧方法などをわかりやすく説明します。
※この記事は2022年2月14日に公開した内容をアップデートしています。
- エコキュートが災害に強い理由
- 停電時・断水時のエコキュートの使い方
- エコキュートの停電後・断水後の復旧方法
- 太陽光発電・蓄電池との併用でより災害に強くなる
- 日々の暮らしにも非常時にも活躍するエコキュート
エコキュートが災害に強い理由
冒頭でもお伝えしましたが、エコキュートは災害対策に適した給湯機です。なぜなら、エコキュートを導入すると、停電時や断水時でもお湯や水が使えるようになるからです(※常に必ず使えるわけではありません。詳しくは後述の注意点をご覧ください)。
まずはエコキュートが災害時に強い理由を、その仕組みから紐解きましょう。
「貯湯式」という仕組みがポイント
エコキュートの大きな特徴は2つあります。それは、①空気の熱で効率よくお湯を沸かすことと、②貯湯式を採用していることです。
いかに効率よくお湯を沸かせるのかという点については関連記事「【図解】エコキュートとは?仕組みやガス給湯器との違いをわかりやすく解説」で確認していただきたいのですが、災害時においては②が大きく関係します。
一般的なガス給湯器は「瞬間式」と呼ばれる仕組みで、お湯が必要なタイミングで、お湯を沸かして給湯します。一方で、エコキュートは「貯湯式」と呼ばれる仕組みを採用していて、沸かしたお湯を貯湯タンクに貯めておき、必要なタイミングで給湯します。
〈図〉「貯湯式」と「瞬間式」の違い
災害時でも貯めた大容量のお湯・水を使える
つまり、貯湯タンクには一定程度のお湯が貯められています。そのため、災害時でも貯湯タンクの中に貯まっているお湯・水を利用することができるのです。
一般的に3〜5人家族向けのエコキュートの場合、満タンならタンク内には370Lものお湯や水が貯められています。370Lといえば、浴槽の約2杯分に匹敵します。
停電時にはお湯として、そのまま使うことができますし、断水した場合でも、生活用水として手洗いやトイレの水として使えたり、体を拭いたり、食器洗いにも使えます。たっぷりの水を備蓄できると考えるととても安心でしょう。
【あわせて読みたい記事】
▶【図解】エコキュートとは?仕組みやガス給湯器との違いをわかりやすく解説
停電時・断水時のエコキュートの使い方
それでは、災害時にエコキュートはどのように使うことができるのでしょうか? 「停電時」「断水時」で利用方法が異なるので、それぞれ確認していきましょう。
【停電時】エコキュートの使用方法と注意点
停電している場合でも、断水していなければシャワーや蛇口からお湯を出すことができます。
しかし、停電時には電気が使えないため、リモコンは利用できません。そのため、温度調整もできず、高温のお湯がシャワーや蛇口から出てくる可能性があります。必ず湯温を確認してから注意して使いましょう。
※一部の古い機種や水道直圧方式の機種ではお湯が出ない場合があります。
また、リモコンが利用できないので、自動での浴槽のお湯はりや追いだきなどの機能も使うことはできません。
参考資料
1)ダイキン「よくあるご質問 エコキュート 大雪・凍結・台風・水害・停電・断水」
2)パナソニック「はじめてのエコキュート 非常時にできること」
3)三菱電機「エコキュート お知らせ 自然災害や停電・断水時の対応について」
4)コロナ「よくあるご質問 エコキュート」
【断水時】エコキュートの使用方法と注意点
停電の有無にかかわらず、断水した場合には、シャワーや蛇口からお湯や水を出すことはできなくなります。もちろん、浴槽のお湯はりもできません。
しかし、エコキュート内のお湯・水を直接取り出すことは可能です。これらはトイレや手洗いなどの生活用水として利用することができます。
お湯・水は、エコキュートの貯湯タンク下部の「非常用取水栓」から取り出します。たとえば、以下の図のように、バケツなどを用意した上で、機器に応じた取り出し手順で非常用取水栓を開きます。
このときも水温調節はできないため、熱湯に注意しましょう。
〈図〉断水時にエコキュートから湯水を取り出す一例
エコキュートの停電後・断水後の復旧方法
停電の復旧後、リモコンの時計に現在時刻が正しく表示されている場合は、そのまま使用できます。時計が正常に表示されていない場合は時刻設定を行いましょう。
一方で、断水していた場合は、水の汚れがなくなるまで排水するなどの対処が必要な場合もあります。対応方法は機種によって異なりますので、故障などを防ぐためにも、取扱説明書を確認しましょう。
太陽光発電・蓄電池との併用でより災害に強くなる
停電時でもエコキュートがあれば、貯湯タンクに貯めておいたお湯を使うことができます。しかし、エコキュートだけでは、新たにお湯を沸かすことはできません。
そこで、災害対策をさらに強化したい方には、太陽光発電と蓄電池の導入検討をおすすめします。
これらを導入した場合、停電時でもエコキュートでお湯を沸かすことができるようになるのです。もちろん、エコキュートだけでなく、家にある多くの電化製品を使えるようになるので安心です。
ちなみに、定置型蓄電池ではなく、電気自動車(EV)を蓄電池代わりに利用する方法もありますので、知りたい方は以下の記事をご参照ください。
【あわせて読みたい記事】
▶電気自動車を蓄電池として使う方法とは?災害対策・電気代節約に!
なお、停電時に太陽光発電・蓄電池とエコキュートを併用する場合のポイントがいくつかあります。ここではその点をご紹介します。
ポイント①エコキュートを稼働するには「全負荷」タイプの蓄電池が必要
太陽光発電や定置型蓄電池が設置されている住宅では、停電時に、電力会社からの電力系統を切り離し、その住宅単体で電気をまかなう「自立運転」に切り替えることができます。
また、定置型蓄電池には、家の全体をまかなう「全負荷」タイプと、特定の部分だけをまかなう「特定負荷」タイプの2種類があります。自立運転でエコキュートを稼働しお湯を沸かすためには、原則として200Ⅴ電源が使えて容量も大きい「全負荷タイプ」の蓄電池が必要です。
ポイント②できるだけエコキュートは昼間に沸かす
自立運転の際には、なるべく太陽光発電が電気をつくる昼間にエコキュートを稼働させて、お湯を沸かしましょう。エコキュートは空気の熱を利用するため、一般的に気温が高い昼間の方が沸き上げ効率がよくなります。
また、自立運転の際は、太陽光発電の売電はできないため、余剰が出る場合はそれをエコキュートに有効活用するとおトクです。これによって副次的に夜間の蓄電池からの使用量を減らすこともできます。
ちなみに、通常のエコキュートでは夜間に沸き上げするのが基本ですが、「おひさまエコキュート」という製品では、おもに太陽光発電でつくった電気で昼間にお湯を沸かすことができます。災害時だけでなく、通常時でも光熱費削減効果が高いので、興味のある方は以下の記事でチェックしてみてください。
ポイント③停電中は節電の意識を忘れずに
当然のことですが、太陽光発電と蓄電池があるからといって、通常時と同様に電気が使えるわけではありません。蓄電池の容量には限りがありますし、太陽光発電は、夜間や天候によっては発電しなかったり、発電量が少なくなったりします。
また、季節や状況によっては、エアコンなど、エコキュートより優先して使用しなければならない電化製品もあるはずです。そのため、くれぐれも停電中の節電の意識は忘れないようにしましょう。
【太陽光発電や蓄電池について詳しくはこちら】
▶︎【図解】太陽光発電と蓄電池を両方とも設置するメリット・デメリットとは?
日々の暮らしにも非常時にも活躍するエコキュート
エコキュートは高効率な電気給湯機です。省エネで光熱費の削減に貢献してくれるだけでなく、災害時でもお湯や水を使えるため、頼りになる存在といえるでしょう。たっぷりのお湯や水を蓄えることができるエコキュートを備えておくと、非常時でも安心です。普段の暮らしにも災害時にも役立つエコキュートを上手に活用して、万が一に備えてみてはいかがでしょうか。
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