ガソリンなどの化石燃料と電気の両方を走行のためのエネルギー(燃料)として使える「プラグインハイブリッド車(PHEV)」。化石燃料だけでも走れてしまう車なだけに、充電を行うタイミングや効果的な使い方をどのように考えるのがいいのか、わからないという方も多いでしょう。PHEVの充電に関する基礎知識から上手に充電を使いこなすコツ、さらに車種別の充電時間や充電コストの目安について解説します。
※この記事は2021年12月14日に公開した内容をアップデートしています。
- PHEVにおける充電の基礎知識
- 充電しないと損! PHEVで充電を上手に使いこなすコツ
- PHEVはどうやって充電される? 仕組みと充電設備を解説
- PHEVを自宅で充電するときの充電設備と設置費用の目安
- 【車種別】PHEVのバッテリー容量・満充電までの充電時間・料金の目安
- PHEVは充電して使う方が断然おトク
PHEVにおける充電の基礎知識
PHEVとは「外部から充電できるハイブリッドカー」のこと
PHEV(プラグインハイブリッド車)はHV(ハイブリッド車)の一種で、その中でも外部から充電できるHVのことを指します。外部から充電する際、コンセントに“プラグを挿す(Plug-in)”ことから、このように表現されます。
PHEVと電気自動車(EV)の違いは動力にありますが、厳密な定義としては、EVは“電気を動力にして動く車両=電動車両”全般を指すためPHEVもEVに含まれます。ただ、一般的にはバッテリーの電気だけを使ってモーターで走る車「BEV(Battery Electric Vehicle」)」をEVと呼ぶことが多く、本稿でもBEVをEVとして扱っています。
PHEVは、エンジンとモーターによる2つの動力を持ち合わせているのが特徴。また、エンジンで発電してバッテリーを充電しながら走行を続けることもできます。
PHEVとEV、充電に関して何が違う?
PHEVとEVはどちらも外部から充電して走ることができます。大きな違いを挙げるなら、PHEVがガソリンなどの化石燃料と電気のどちらでも走れるのに対し、EVは電気のみをエネルギーとして走ることです。
そのため、基本的に、EVはPHEVよりも容量が大きいバッテリーを搭載しています。目安として、EVは少なくとも20kWh以上のバッテリー容量を備えているのに対し、PHEVの多くは10~20kWhが一般的です。また、同じ距離を走る場合、EVでかかる充電代はエンジン車の燃料代と比較すると1/2以下になることもあり、EVは走行コストが安いと言えるでしょう。
一方で、PHEVはエンジンとモーターの両方で走れる仕組みになっているため、EVよりもバッテリー残量を気にせずに走行できるメリットがあります。とくに長距離旅行などをする場合には、PHEVではガソリンスタンドに立ち寄れば燃料補給を素早く行うことが可能です。ただし、エンジンを使って走行する場合、EVよりも走行コストは高くなる傾向にあります。
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充電しないと損! PHEVで充電を上手に使いこなすコツ
エンジン車とEV両方の魅力を兼ね備えたPHEVですが、気になるのが「充電をすることなくエンジン車として走行できるのか」という点です。結論から言えば、PHEVは充電することなく走行が可能です。ただし、充電せずに走らせるということは大容量バッテリーのメリットを活かさず、EVの魅力である走行コストの低さを享受できないことになります。また、エンジンとバッテリーの両方を搭載していて車重が重くなっているため、燃費もあまりよくない傾向があります。
一方で充電をしてEVとして乗りこなすなら、片道10〜20kmの通勤や買い物などの近場の移動に向いています。もちろん、バッテリーの電気を使い果たしたらエンジンに切り替えて走り続けることができるので、長距離ドライブでも不安はありません。
つまり、PHEVのメリットを最大限享受するには、いかに電気だけで走るEV走行距離を長くするかということになります。そのためには、自宅などでこまめに充電することが重要です。
また、充電料金を安く抑えるうえで、もうひとつ忘れてはいけないのが「走らせ方」、いわゆるエコドライブです。EVはエンジン車以上に走らせ方によって、燃費(電費)が変わります。急加速はなるべく控えてください。また、エアコン(特に暖房)の影響が大きいことも覚えておくとよいでしょう。
エコドライブのコツはエンジン車とそれほど違いません。もっとも重要なのは、極端なアクセルワークを避けること。速度変化が少なく穏やかな運転を心掛けるのが、燃費(電費)をよくする走り方です。
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PHEVはどうやって充電される? 仕組みと充電設備を解説
PHEVの充電の種類
EVと同様に、PHEVの充電は大きく分けて、普通充電と急速充電のふたつがあります。
普通充電とは、交流(AC)の電源で行うものです。自宅ガレージの充電用200Vコンセントや「普通充電器」と呼ばれる充電器を使うのが一般的で、充電コストも安く、手軽に行えるため、基本の充電方法と言えるでしょう。
一方で、急速充電は直流(DC)を使用します。普通充電と比べて、高出力で短時間に充電する方法で、主に高速道路のサービスエリア(SA)や自動車ディーラー、公共施設などで行うことができます。
ただしPHEVの中には、急速充電に対応していない車種もあり、とくに輸入車はほとんどが急速充電非対応車となります。この背景には、PHEVの急速充電に対する各国メーカーの考え方が反映されています。というのも、PHEVはEVに比べて搭載するバッテリー容量が小さく、急速充電時の車側の受け入れ可能電力が小さい傾向にあるからです。
たとえば急速充電に対応したPHEVを50kWといった高出力の急速充電器に繋いでも、実際に充電される出力(車側が受け入れ可能な電力)は多くの車種で20kW程度などと小さいため、EVよりも急速充電器のメリットを享受できません。
急速充電に対応している日本車が多い理由は、三菱自動車の「アウトランダーPHEV」が急速充電機能に対応したことがきっかけだと言われています。代表的なPHEVの車種について急速充電に対応しているか、メーカーのオプションを一覧にしました。こちらも参考にしてください。
(1)トヨタ 1)2)
車種 | 急速充電 |
RAV4 | 非対応 |
プリウス PHV (旧型) |
対応 (オプション) |
プリウス (現行型) |
非対応 |
(2)三菱自動車 3)4)
車種 | 急速充電 |
アウトランダー PHEV | 対応 |
エクリプス クロス PHEVモデル | 対応 |
(3)BMW 5)6)
車種 | 急速充電 |
330e M Sport | 非対応 |
X5 xDrive50e | 非対応 |
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参考資料
1)トヨタ「RAV4」
2)トヨタ「プリウス」
3)三菱自動車「アウトランダーPHEV」
4)三菱自動車「エクリプス クロス」PHEVモデル
5)BMW「330e M Sport」
6)BMW「X5 xDrive50e」
PHEVを充電できる場所
前述のように、PHEVにおける普通充電と急速充電は目的や使い方が異なります。したがって、設置されている場所も、普通充電器と急速充電器で異なる傾向があります。下記の表でチェックしましょう。
<表>充電スタンドが設置されている主な場所
充電器の種類 | 主な設置場所 |
普通充電器 | 自宅、宿泊施設、商業施設、オフィスビルの駐車場 |
急速充電器 | 高速道路のSAやPA、幹線道路沿いの道の駅、コンビニの駐車場、地方自治体の施設、カーディーラー、商業施設 |
自宅以外の充電施設で充電をする際に必要となるのが「充電カード(認証カード)」です。公共の充電スポットの多くは東京電力グループのe-Mobility Power(eMP)の充電インフラネットワークに加盟しています。
eMPネットワーク加盟の充電器はコンビニなど全国のさまざまな場所に設置されていますが、利用する際には原則自動車メーカーなどが発行する「充電カード(認証カード)」が必要です。自動車メーカーが発行するカードの場合、新車購入時から一定期間は月会費や利用料がサービス(0円)となるケースもあるので、カーディーラーなどに確認して上手に活用してください。
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PHEVを自宅で充電するときの充電設備と設置費用の目安
おすすめの自宅充電設備はコンセントタイプ
自宅に設置できる充電設備は、簡易的なものから高価なものまでさまざまな種類があります。なかでも、最も設置工事が簡単な充電設備がコンセントタイプです。代表的なのが、パナソニックの「EV・PHEV充電用コンセント」。
充電器のデザインは豊富で、壁面取り付けタイプでは自動車メーカー公式のモデルが多数あります。普通充電器は車種やメーカーが違っていても問題なく充電できるので、国産PHEVのオーナーでも輸入車メーカーブランドの充電器を設置し使うことができます。気になるブランドがあればそのメーカーやディーラーに相談してみてください。ただし、高級輸入車の専用チャージャーは8kW以上などの高出力対応が多く、3kWや6kW対応の一般的なPHEVでは機能を持て余してしまう場合もあるので注意が必要です。
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車の充電も給電も可能なV2H機器を取り入れる
充電設備としてV2H(Vehicle to Home)機器を取り入れれば、充電するだけでなく、PHEVに蓄えた電気を家庭で有効活用することができます。通常の家庭用200Vコンセントと比較した場合、最大2倍の出力で充電できるため、PHEVの充電時間を大幅に短縮することが可能です。
さらに、車に蓄えた電気を災害時にも非常用電源として自宅で活用できるので、いざというときも安心できます。2023年6月現在、V2Hに対応しているPHEVは、「プリウスPHV(旧型)」と「アウトランダーPHEV」「エクリプス クロス」PHEVモデルです。PHEV購入の際は、V2Hとしての活用方法を視野に入れて車種を検討するのがおすすめです。
設置費用の目安
コンセントタイプの充電設備の場合、車載充電ケーブルを取り付けて充電する必要があります。なお、製品自体はおおよそ5000円以内で購入できます。自宅の分電盤からコンセント設置場所までのケーブルの長さなどの条件等で費用は変わりますが、工事費を含めて10万円程度が目安です。
自宅で充電設備を設置するときの注意点
自宅の充電設備は、数年後のカーライフを想定して設置するのがおすすめです。PHEVは、長らく3kW(200V15A)対応モデルで普及してきましたが、最近ではより短時間で充電できる6kW(200V30A)対応の輸入車もあります。それらのPHEVやEVへ乗り換える可能性があることも考えて取り付けを検討しましょう。
さらに、注意すべきポイントはセキュリティ面です。自宅のガレージにシャッターがないなど、セキュリティが気になる人は施錠できるタイプを選ぶのがおすすめです。
設置工事には電気工事士の資格が要るので、施工会社などに依頼するのが基本です。そのうえで注意すべきは配線の長さ。自宅(分電盤)とガレージの位置が離れているといった環境の人は、事前に見積もりを取るようにしましょう。
【車種別】PHEVのバッテリー容量・満充電までの充電時間・料金の目安
下記の表では、2023年6月現在に購入できるPHEVの人気車種のバッテリー容量と満充電までの充電時間、充電料金の目安を表で整理しました。気になる車種をチェックしてみてください。
※それぞれの車種に対して、充電時間の目安に加えて、普通充電での充電料金目安を一覧表で紹介します。なお、出力3kWの普通充電で充電、充電料金は31円/kWh※の条件にて計算しています。
※全国家庭電気製品公正取引協議会の公表情報参照。電力量料金のみの金額。基本料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金は加味していない。
Ⅰ.国産車編
以下、メーカーを50音順で表示しています。
(1)トヨタ 1) 2)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
RAV4 | 18.1 kWh | 約6.0時間 | 561円 |
プリウス | 13.6 kWh | 約4.5時間 | 421円 |
(2)三菱自動車 3)4)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
アウトランダー PHEV | 20.0 kWh | 約6.7時間 | 620円 |
エクリプス クロス PHEVモデル | 13.8 kWh | 約4.6時間 | 427円 |
ll. 輸入車編
(1)BMW 5)6)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
330e M Sport | 12.0 kWh | 約4.0時間 | 372円 |
X5 xDrive50e | 29.5 kWh | 約9.8時間 | 914円 |
(2)ポルシェ 7)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
カイエン E-ハイブリッド |
25.9 kWh | 約8.6時間 | 802円 |
(3)MINI 8)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
MINI COOPER S E CROSSOVER ALL4 | 10.0 kWh | 3.3時間 | 310円 |
参考資料
5)BMW「330e M Sport」
6)BMW「X5 xDrive50e」
7)ポルシェ「カイエンE-ハイブリッド」
8)MINI「MINI COOPER S E CROSSOVER ALL4」
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PHEVは充電して使う方が断然おトク
エンジンでもモーターでも走行できるPHEVですが、やはり充電をしてEVとして使った方がコスト面でおトクです。特に、遠出をあまりせず、10〜20kmの街乗りの範囲で使用するならメリットが非常にあります。また、こまめに充電するために自宅に充電設備を設置するのがおすすめです。EVとPHEV、それぞれの特性を理解して、上手に充電を使いこなしましょう。