プラグインハイブリッド車(PHEV)はガソリンと電気の両方を走行のためのエネルギー(燃料)として使えます。しかし、ガソリンだけでも走行できるため、充電のタイミングや効果的な使い方がわからないという方も多いでしょう。PHEVの充電に関する基礎知識から上手に充電を使いこなすコツ、さらに車種別の充電時間や充電コストの目安について解説します。
※この記事は2023年6月19日に公開した内容をアップデートしています。
- PHEVの充電に関する基礎知識
- PHEVの充電を上手に行うためのコツとは?
- PHEVを充電する方法と充電できる設備を解説
- PHEVの自宅充電設備の種類と設置費用の目安
- 【車種別】PHEVのバッテリー容量・充電時間・料金の目安
- PHEVは充電して使うほうが断然おトク
PHEVの充電に関する基礎知識
PHEVは「外部から充電できるハイブリッド車」
PHEVはエンジンとモーターで走行するHEV(ハイブリッド車)の一種ですが、HEVよりも数倍~数十倍大きな駆動用バッテリーを搭載し、そのバッテリーに外部から充電することができます。この際、“プラグを挿し込んで(Plug-in)”充電を行うことから、プラグインハイブリッド車と呼ばれています。
外部から充電することができ、電気のみで走行できる点は電気自動車(EV)と同じですが、PHEVはEVと違い、バッテリーとモーターだけでなく燃料タンクとエンジンも搭載しています。エンジンとモーターによる2つの動力を持ち合わせ、EVとHEVの良いとこ取りをしているのがPHEVの大きな特徴です。
PHEVとEVは充電に関する考え方がどう違う?
ただし、PHEVはガソリンなどをエネルギーに走行できるため、電気のみをエネルギーにするEVに比べて駆動用バッテリーの容量が比較的小さくなっています。たとえば、EVが軽自動車でも20kWhのバッテリー容量を備えているのに対し、PHEVのバッテリー容量は約14~23kWh(現行国産車)です。
PHEVのバッテリー容量がEVより小さいのは、前述 のようにエンジンとモーターのどちらでも走れる仕組みになっているからです。とくに長距離ドライブに出かける場合、PHEVはガソリンスタンドに立ち寄れば燃料補給を素早く行うことが可能です。
このように、バッテリー残量が心もとないときにエンジンで走れるかどうかがEVとの最大の違いです。そのため、PHEVの充電は、モーターだけで走行するEVと少し考え方が異なります。
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PHEVの充電を上手に行うためのコツとは?
PHEVの充電は、EVを充電する場合とどのように考え方が違うのでしょうか。PHEVの充電を上手に行うためのコツ、さらに充電料金を安く抑えることのできる走り方について紹介します。
PHEVの充電は「こまめに充電する」がポイント
PHEVはHEVとしても使えますから、極端にいえば、充電しなくても走行することが可能です。ただし、EV走行しなければPHEVとしての魅力が半減してしまい、大きなメリットである走行コストの安さを享受できないことになります。
また、エンジンに加えて重量のかさむ駆動用バッテリーも搭載しているPHEVは車重が重くなりがちで、HEVに比べるとハイブリッド燃費もやや悪くなる傾向にあります。
一方で、おもな国産車のPHEVのEV走行距離は57〜106kmとなっており、平均すると約85kmです。通勤や買い物などの近場への移動に使う程度なら十分な性能で、日常使いをEV走行でまかなえれば、その分ランニングコストを抑えることができます。
つまり、PHEVのメリットを最大限生かすには、いかに電気だけで走るEV走行距離を長くするかがポイントになるわけです。そのためには、自宅などの拠点に設置した普通充電器でPHEVの充電をこまめに行うことがもっとも重要になります。
充電料金を安く抑えられるPHEVの乗り方は?
また、走行コスト=充電料金を安く抑えるうえでもうひとつ忘れてはいけないのが走らせ方、いわゆるエコドライブです。
EVはガソリン車同様に乗り方で電費(燃費)が変わります。急加速などは電力消費が大きく、また、エアコン(特に真冬の暖房)の使用時には電費が低下しがちです。これはEVにかぎった話ではなく、PHEVでEV走行するときも変わりません。だからこそ、日ごろからエコドライブを心がける必要があるわけです。
PHEVでエコドライブするためのコツはガソリン車とそれほど違いません。もっとも重要なのは、急加速などの極端なアクセルワークを避けること。速度変化をなるべく少なくし、穏やかな運転を心掛けることが電費をよくするためのポイントです。
PHEVを充電する方法と充電できる設備を解説
ひと口に充電といっても、PHEVの充電はどのように行えばいいのでしょうか。また、充電するための場所やその際の手続きなどの方法がわからない方もいるはずです。そこで、PHEVの充電の種類や仕組み、充電設備などについて詳しく解説します。
PHEVを充電するには2つの方法がある
PHEVの充電には、EVと同様に大きく分けて普通充電と急速充電の2つがあります。このうち、普通充電は交流(AC)の電源を使用し、自宅ガレージなどに設置した充電用200Vコンセントや「普通充電器」と呼ばれる充電器で行うのが一般的です。充電コストも安く手軽に行えるため、基本の充電方法といえるでしょう。
とくにエンジンで走行することもできるPHEVの場合、EV以上に自宅などの拠点で行う普通充電が運用の中心になります。
一方、急速充電は直流(DC)を使用し、普通充電よりも高出力の充電器によって短時間に充電する方法です。おもに高速道路のサービスエリア(SA)や道の駅、自動車ディーラー、公共施設などに設置された急速充電器で充電を行うことができます。なお、急速充電は1回の利用時間が原則30分と定められています。
輸入車には急速充電に対応するPHEVが少ない
ただし、PHEVのなかには急速充電に対応していない車種があり、とくに輸入車の場合は多くが急速充電に非対応となっています。PHEVはEVに比べてバッテリー容量が小さいため、普通充電でも十分に事足りることや、急速充電時の受け入れ最大電力も小さい傾向にあるからです。
たとえば、急速充電に対応したPHEVを最大出力150kWの急速充電器で充電しても、実際に充電される最大出力(車側が受け入れ可能な電力)は多くの車種で20~50kW程度です。これではEVのように急速充電器のメリットをあまり享受できません。
一方で、国産車のPHEVには急速充電に対応している車種が比較的多くあります。その理由は、三菱「アウトランダーPHEV」が急速充電に対応したことで他社が追随したためといわれています。
おもな国産車のPHEVの急速充電対応について、以下に一覧にしました。PHEVに興味のある方は参考にしてください。
(1)トヨタ 1)2)3)
車種 | 急速充電 |
ハリアー Z | 非対応 |
プリウス G/Z | 非対応 |
クラウンスポーツ RS | 対応 |
(2)マツダ 4)
車種 | 急速充電 |
CX-60 PHEV | 対応 |
(3)三菱自動車 5)6)
車種 | 急速充電 |
アウトランダー PHEV | 対応 |
エクリプス クロス PHEVモデル | 対応 |
PHEVを充電できる場所と充電設備の使い方は?
PHEVにかぎらず、普通充電と急速充電は目的や使い方が異なります。したがって、設置されている場所も、普通充電器と急速充電器で異なる傾向があります。下記の表でチェックしましょう。
〈表〉充電スタンドが設置されているおもな場所
充電器の種類 | おもな設置場所 |
普通充電器 | 自宅、宿泊施設、商業施設、オフィスビルの駐車場 |
急速充電器 | 高速道路のSAやPA、幹線道路沿いの道の駅、コンビニの駐車場、地方自治体の施設、カーディーラー、商業施設 |
充電器の使い方も自宅などの拠点と外出先とでは異なります。自宅の200Vコンセントで充電する場合は充電コネクタを車両の充電口に挿し込むだけでOKですが、自宅以外の充電施設で充電をする際には、原則として認証・決済のための「充電カード(認証カード)」などが必要になります。
公共の充電スポットの多くは東京電力グループのe-Mobility Power(eMP)の充電インフラネットワークに加盟しています。
eMPネットワーク加盟の充電器は全国のさまざまな場所に設置されていますが、利用時には原則自動車メーカーなどが発行する「充電カード(認証カード)」が必要です。PHEVは自宅などで充電するのが運用の中心ですが、いざというときのためにPHEVユーザーも充電カードを所有しておくと便利です。
自動車メーカーが発行するカードの場合、新車購入時から一定期間は月会費や利用料がサービス(0円)となるケースもあるので、カーディーラーなどに確認して上手に活用してください。
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参考資料
1)トヨタ「ハリアー」
2)トヨタ「プリウス」
3)トヨタ「クラウン(スポーツ)」
4)マツダ「CX-60 PHEV」
5)三菱自動車「アウトランダーPHEV」
6)三菱自動車「エクリプス クロス」PHEVモデル
PHEVの自宅充電設備の種類と設置費用の目安
PHEVは自宅などで充電するのが基本ですので、気になるのは充電器の種類や設置するためのコストでしょう。おもな充電設備と設置費用、設置するときの注意点について解説します。
おすすめの自宅充電設備は「コンセントタイプ」
自宅に設置できる充電設備には、簡易的なものから高価なものまでさまざまな種類があります。なかでも、もっとも安価な充電設備が“コンセントタイプ”で、その代表的な製品がパナソニックの「EV・PHEV充電用コンセント」です。
コンセントタイプのほかにも壁面取り付けタイプなどがあり、このタイプには自動車メーカー公式のモデルが多数あります。普通充電器は車種やメーカーが違っていても問題なく充電することができますので、国産車のPHEVのオーナーでも輸入車メーカーブランドの充電器を設置して使用することが可能です。
ただし、輸入車ブランドの普通充電器は最大出力8kW以上などの高出力対応が多く、3kWや6kW対応の一般的なPHEVでは機能を持て余してしまう場合もあるので注意が必要です。
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PHEVの充電も給電も可能な「V2H」という選択肢
さらにもうひとつ、より多くの機能を備える「V2H(Vehicle to Home)」という選択肢もあります。V2HはEV・PHEVに蓄えた電気を家庭で有効活用するためのシステムで、通常の家庭用200Vコンセントと比較した場合、最大2倍の出力(6kW)で充電できるため、PHEVの充電時間を大幅に短縮することが可能です。
さらに、V2Hを導入するとPHEVに蓄えた電気を家庭用電源としても使えるようになり、災害時には非常用電源として活用できるほか、使い方によって電気代の削減効果も期待できます。
2024年12月時点の現行車で、V2Hに対応しているおもな国産車のPHEVは、トヨタ「クラウンスポーツ RS」、マツダ「CX-60 PHEV」、三菱「アウトランダー PHEV」「エクリプス クロス」PHEVモデルなどがあります。PHEVを購入する際は、V2Hを導入して活用する方法を視野に入れて車種を検討するのがおすすめです。
自宅に充電設備を設置するための費用の目安は?
コンセントタイプであれば設置費用はそれほど高くありません。製品自体は安いものなら5000円余りで購入でき、半日程度かかる工事費を合わせると10万円前後が導入コストの目安です。ただし、自宅の分電盤からコンセント設置場所までのケーブルの長さなどの条件で費用は変わります。
自宅にPHEVの充電設備を設置するときの注意点
自宅の充電設備は数年後のカーライフを想定して設置するのがおすすめです。たとえば、PHEVは長らく出力3kW(200V15A)対応モデルで普及してきましたが、最近ではより短時間で充電できる6kW(200V30A)対応の車もあります。それらのPHEVやEVへ乗り換える可能性を考えて取り付けを検討しましょう。
さらに、注意すべきポイントはセキュリティ面です。自宅のガレージにシャッターがない場合など、セキュリティが気になる人は施錠できるタイプの充電器を選ぶのがおすすめです。
なお、設置工事には電気工事士の資格が必要ですので、施工会社などに依頼するのが基本です。そのうえで注意すべきポイントは配線の長さ。自宅(分電盤)とガレージの位置が離れているといった環境の人は、事前に必ず見積もりを取るようにしましょう。
【車種別】PHEVのバッテリー容量・充電時間・料金の目安
最後に、PHEVの人気車種のバッテリー容量と満充電までの充電時間などをチェックしてみましょう。以下の表は、2024年12月時点で購入できるおもなPHEVの「バッテリー容量」「満充電までの充電時間」「充電料金の目安」を整理したものです。
なお、充電時間や充電料金は、出力3kWの普通充電で充電、充電料金は31円/kWh(※)の条件にて計算しています。
※全国家庭電気製品公正取引協議会の公表情報参照。電力量料金のみの金額。基本料金・燃料費調整額・再生可能エネルギー発電促進賦課金は加味していない。
【国産車編】人気車種の充電時間や充電料金をチェック
以下、メーカーを50音順で表示しています。
(1)トヨタ 1) 2) 3)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
ハリアー Z | 18.1 kWh | 約6.0時間 | 約561円 |
プリウス G/Z | 13.6 kWh | 約4.5時間 | 約421円 |
クラウンスポーツ RS | 18.1 kWh | 約6.0時間 | 約561円 |
(2)マツダ 4)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
CX-60 PHEV | 17.8 kWh | 約5.9時間 | 約551円 |
(3)三菱自動車 5) 6)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
アウトランダー PHEV | 22.7 kWh | 約7.6時間 | 約703円 |
エクリプス クロス PHEVモデル | 13.8 kWh | 約4.6時間 | 約427円 |
【輸入車編】人気車種の充電時間や充電料金をチェック
(1)ジープ 7)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
レネゲード 4xe | 11.4 kWh | 約3.8時間 | 約353円 |
(2)BMW 8)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
X5 xDrive50e | 29.5 kWh | 約9.8時間 | 約914円 |
(3)ポルシェ 9)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
カイエン E-ハイブリッド |
25.9 kWh | 約8.6時間 | 約802円 |
(4)ボルボ 10)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
XC60 プラグインハイブリッド | 18.8 kWh | 約6.3時間 | 約582円 |
(5)メルセデス・ベンツ 11)
車種 | バッテリー容量 | 充電時間 | 充電料金 |
GLC350e 4MATIC | 31.2 kWh | 約10.4時間 | 約967円 |
参考資料
7)ジープ「レネゲード 4xe」
8)BMW「X5 xDrive50e」
9)ポルシェ「カイエンE-ハイブリッド」
10)ボルボ「XC60 プラグインハイブリッド」
11)メルセデス・ベンツ「GLC 350 e 4MATIC」
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PHEVは充電して使うほうが断然おトク
エンジンでもモーターでも走行できるPHEVですが、やはり充電をしてEVとして使うほうがコスト面でおトクです。特に、遠出をあまりせず、10〜20kmの街乗りの範囲で使用するならメリットが非常にあります。また、こまめに充電するために自宅に充電設備を設置するのがおすすめです。EVとPHEV、それぞれの特性を理解して、上手に充電を使いこなしましょう。
※本記事の内容は公開日時点での情報となります