キャンプブームが盛り上がりをみせる昨今、その楽しみ方は多彩さを増しています。そのひとつが、キャンプに電気を取り入れることで、より手軽で快適なアウトドアライフを実現するEV・PHEVキャンプです。三菱・アウトランダーPHEVを使ってキャンプを実践しているYouTuberのダリィさんに、キャンプに持っていくべき電化製品の「三種の神器」と、そのおすすめの使い方を教えてもらいました。
初心者でも簡単に始められるEV・PHEVキャンプ
キャンプにはさまざまなスタイルがあります。たとえば、専門的なギア(道具)を持ち込んで大自然を満喫する本格キャンプ、最低限のギアでサバイバル要素を楽しむブッシュクラフト、贅沢な非日常を味わうグランピング、さらには快適な車中泊を可能にするキャンピングカーでのキャンプなど、そのスタイルは多種多様です。
しかし、本格キャンプは風情を味わえる反面、専門的な装備を買い揃えなければならず、事前の準備や現地で行う設営も初心者にとっては大変です。かといって、施設にギアや食事が準備されているグランピングでは少し物足りなく、キャンピングカーは購入費用の問題などから簡単に手を出せません。
そういった意味で、初心者におすすめなのがEV(電気自動車)やPHV・PHEV(プラグインハイブリッド車)を活用したキャンプです。
EV・PHEVは容量の大きいバッテリーを搭載しているので、ガソリン車では使えなかったさまざまな電化製品が使用できます。キャンプに電化製品を取り入れることができれば、自ずと準備や設営が簡略化され、キャンプに出かけるハードルが下がります。
電化製品を取り入れることで、自然を感じながら手軽かつ快適に過ごせるのがEV・PHEVキャンプの魅力と言えるでしょう。
EV・PHEVキャンプを実践するYouTuberダリィさん
取材に協力していただいたのは、愛車の三菱・アウトランダーPHEVを活用し、自身のYouTubeチャンネルで“家電キャンプ”にフォーカスした動画を発信しているYouTuberのダリィさんです。
ダリィさんは、ひとりでふらっと出かけるソロキャンプ、休日に家族で楽しむファミリーキャンプと、中部地方を中心に年に10回以上キャンプ場を訪れますが、そこには3つのコンセプトがあると言います。それは「準備や設営に手間をかけない」「化石燃料を使わない」「なるべく消耗品を出さない」というものです。
そこでダリィさんのキャンプに欠かせないのがPHEVです。PHEVはHV(ハイブリッド車)より大容量のバッテリーを搭載し、コンセントを通じてそのバッテリーに蓄えられた電力を取り出すことができます。つまり、キャンプ場で便利な調理家電を使って料理をしたり、ハロゲンヒーターで暖を取ったりすることが可能になるのです。
【ダリィさんのYouTubeチャンネルはこちら】
▶︎DALY's Studio.
キャンプで活躍する愛車は三菱・アウトランダーPHEV
まずはダリィさんの愛車を紹介しましょう。アウトランダーPHEVは三菱自動車が販売するSUVタイプの車で、ダリィさんが所有しているのは現行型のひとつ前のモデルにあたります。
「購入したのは2016年で、税金や諸費用も含めると初期費用は約430万円でした。12kWhの容量を持つバッテリーのみでも約40kmが走行でき、普段使いなら十分な航続距離です。充電は自宅の車庫に設置した200Vの普通充電器で行っています」(ダリィさん、以下同)
とくにダリィさんのキャンプライフにとって重要となるのが、アウトランダーPHEVが搭載する大容量バッテリーの電力を取り出すことのできるAC100Vのコンセントです。
「ラゲッジルームに設置したコンセントはオプションだったのですが、この電源のおかげでキャンプライフが格段に快適になりました。最大出力が1500Wもあるので、キャンプに必要なほとんどすべての電化製品を使用することができます」
ダリィさんが実践しているEV・PHEVキャンプとはどのようなものなのでしょうか。基本装備から紹介していきます。
EVキャンパーが必ず持っていく基本装備は?
キャンプに行ったことのない人、家族や友人に連れて行ってもらった経験しかない人は、装備はもちろん、キャンプ場の選び方など、わからないことだらけかもしれません。しかし、EV・PHEVキャンプは装備も必要最低限のものだけで十分です。
キャンプ施設は「オートキャンプ場」を選ぶ
キャンプ場には、普通のキャンプ場とオートキャンプ場の2種類があります(オートキャンプ場を併設している普通のキャンプ場もあります)。普通のキャンプ場は、テントを設営するサイト(区画)に車を横づけしておくことができません。したがって、EV・PHEVキャンプの際はオートキャンプ場を選ぶ必要があります。
「私がよく利用するのは公営のオートキャンプ場です。利用料金はデイキャンプか宿泊するかによって変動しますが、デイキャンプなら2000〜3000円程度、宿泊だと5000円前後。ネット予約だけでなく電話予約にも対応している施設が多いので、気軽に利用できます」
中心は電化製品。EV・PHEVキャンプの基本装備
キャンプの装備というと、タープテント、テーブル、チェアに加え、焚き火テーブル、OD缶(アウトドアユースを目的としたガス缶)を使用するガス器具、ガスランタン(ガソリンランタン)、そして鍋やフライパンなどをイメージします。なかには準備や設営が大変なだけでなく、入手しづらいギアもあります。
しかし、ダリィさんは「EV・PHEVを使う家電キャンプならそれらの装備をかなり簡略化できる」と言います。
「燃料を使わない手軽なキャンプを心がけているので、装備は最低限のものしか持っていきません。そのなかで、私が実践するEV・PHEVキャンプの必須アイテムとなっているのが『ホットプレート』『ポータブル冷蔵庫』『電気ケトル』の3つです。この3つの電化製品があれば、キャンプ飯を作るのにまったく不自由しません」
ここで重要なのは、ダリィさんの愛車が備えるAC100Vコンセントの最大出力が1500Wだということです。
「1500Wあれば、ホットプレート、冷蔵庫、電気ケトルの3つを同時に使用することが可能です(※使用機器の消費電力によります)。EV・PHEVキャンプだからこそ、基本装備を最小化できるのです」
そして当然ながら、これらの電化製品を同時使用するためには複数の差込口を備えた延長コードも必需品となります。
ダリィさんがキャンプに持っていく基本装備を下の表にまとめました。ギアの少ない初心者の人は参考にしてみてください。
おもな装備 | おすすめポイント |
ポップアップテント | 収納袋から出して広げるだけで立ち上げるテントです。通常のテントより設営が手軽で携帯しやすいというメリットがあります。 |
折りたたみ式ホットプレート | コンパクトさに加え、平面、ディンプル、たこ焼きの3種類のプレートが付属しているので、さまざまな調理に使えて便利です。 |
ポータブル冷蔵庫 | 持ち運びのできるポータブル冷蔵庫があると、キャンプライフの充実度が格段に向上します。冷蔵庫の装備は通常のキャンプではなかなか真似できません。 |
トラベル電気ケトル | トラベル電気ケトルはシリコン製なので、使用しないときは折りたたんで収納することが可能です。 |
ソーラーLEDランタン | キャンプ用ランタンはガスを使用するのが一般的ですが、LEDランタンは太陽光で発電します。燃料を使わないので安全性も高いのが特徴です。 |
延長コード | 地味ながら、EV・PHEVキャンプに絶対欠かせないのが複数の差込口をもつ延長コードです。 |
三種の神器①ホットプレート
準備・片付けが簡単。2面プレートなら複数の料理が同時にできる
ここからは、EV・PHEVキャンプの「三種の神器」となる3つの電化製品をどのように活用するかについて、ダリィさんに解説してもらいましょう。
キャンプ飯といえば、焚き火テーブルで行うバーベキューを思い浮かべますが、準備や片付けが大変です。そこで、ダリィさんがフル活用しているのが折りたたみ式のホットプレートです。
「私が使っているホットプレートは、折りたたんでコンパクトにできるだけでなく、プレートが2面あり、それぞれ温度調節できるので、さまざまな料理を同時に行うことが可能です。たとえば、ひとつのプレートでビーフペッパーライスを調理し、もうひとつでアヒージョを作るということもできます(上の写真)。冬キャンプでは深めのプレートで豚バラ鍋を作ったこともありました」
ホットプレートを一台用意しておけば、焚き火テーブルやガス器具、さらにはフライパンや鍋さえも必要ないわけです。
三種の神器②ポータブル冷蔵庫
キャンプ飯の充実度が格段にアップ。自宅からそのまま持ち運べるのも便利
通常のキャンプでは見かける機会が少ないのが冷蔵庫です。クーラーボックスでもアウトドア用の保冷剤を使えばある程度の冷たさを保つことができますが、保冷力という意味ではやはり冷蔵庫に勝るものはありません。
「ミニ冷蔵庫(ポータブル冷蔵庫)は、ドリンク類を冷やしたり、食材の鮮度をキープしたり、食べ物を野生動物から守ってくれたりするので、EV・PHEVキャンプの必需品です。私の場合、前日から飲み物などを入れて冷やしておき、キャンプ場に向かう途中で購入した食材を保冷するために活用しています」
もちろん、ガソリン車等でもシガーソケットに接続すれば冷蔵庫を使用できる場合がありますが、EV・PHEVとは大きな差があるようです。
「冷蔵庫は電源を常時オンにして長時間使うので、ガソリン車等の場合エンジンをかけっぱなしにしておく必要があります。しかし、エンジンをかけっぱなしだと音がうるさいし環境にもよくなく、あまり現実的な方法ではないです。その点、PHEVはバッテリーの容量が大きくエンジンをかけずに長時間電気を使えるので、そこは大きなメリットです」
三種の神器③電気ケトル
ホットコーヒー、ごはんの温め、調理の下処理にも。安価で小型な製品がおすすめ
電気ケトルはお湯を沸かしたりコーヒーを淹れたりするときに便利なので、日常生活で使っている人も多いことでしょう。ダリィさんは、この電気ケトルをキャンプにも重宝しているそうです。
「私が使用しているのは折りたためるシリコン製のケトルです。一見するとかなり小さいのですが、伸ばせばけっこう容量があります。ケトルが一台あるだけで、キャンプライフがかなり充実します。今回のキャンプでも、ケトルでレトルトご飯を温めたり、アヒージョに使うブロッコリーを茹でたりしました」
ただし、ダリィさんは「ケトル選びにはコツがある」と言います。
「じつはケトルの使用頻度は、想像するよりも高くありません。EV・PHEVキャンプに欠かせない必須アイテムだけれど、ホットプレートや冷蔵庫に比べると使用するシーンは少ない。そういう点から考えると、それほど高機能で高いケトルを買う必要はないと思います。安価でコンパクト、これがケトル選びのコツです」
冬キャンプはどう過ごす? 寒さ対策にはホットカーペット
ここまでは「三種の神器」を紹介しましたが、EV・PHEVキャンプの楽しみ方は、キャンプ飯に電化製品を活用することだけではありません。じつは、EV・PHEVの電源は冬にもかなり重宝するのです。
冬のキャンプは「夜空がきれい」「虫が出ない」「暖かな焚き火の真価をより実感できる」といった理由から、じつはキャンパーのあいだで人気です。しかし、風情が味わえる反面、寒いのも事実。つまり、冬キャンプは寒さ対策が重要となるわけです。
「いつも冬は車中泊によるソロキャンプを中心に行っているのですが、その際に必需品となるのがホットカーペットです。エアコンを入れる方法もありますが、暖房は電気をかなり消費するうえ、時おりエンジンが作動するので音が気になります。そのため、ホットカーペットがもっとも使い勝手がいいという結論になりました」
ダリィさんは、今年の冬キャンプには家族全員で行くことを考えていて、その場合は別のアイテムを準備すると言います。
「車中泊ならホットカーペットで十分ですが、テント泊となると別の暖房器具を装備する必要があります。いま考えているのはハロゲンヒーターです。ガスや石油ヒーターのように燃料を使わないので安全で、なおかつ比較的安価というのがその理由です」
【番外編】キャンプ場でワーケーション。EV・PHEVを利用してこんなことも!
ダリィさんは自粛期間中、自宅はもちろん、キャンプ場でリモートワークをしたこともあったそうです。その際に実感したのが、EV・PHEVキャンプはワーケーションにも向いているということです。
「理解のある職場なので、試しにキャンプ場でリモートワークをやってみたのです。すると、気分転換できるので、非常に作業がはかどる。また、半日ほど作業するとノートパソコンのバッテリーをかなり消費しますが、PHEVの電源なら充電速度も速い。EV・PHEVキャンプはワーケーションに使えると思いました」
リモートワークだけでなく、EV・PHEVキャンプは「非日常な環境でエンタメを楽しむこともできる」とダリィさんは言います。
「一度だけですが、山の中でキャンプしたときにエレキギターを持ち込み、アンプをアウトランダーPHEVのコンセントに接続して弾いてみたことがあったのです。それが思いのほか気持ちがよく、気のせいかノイズが少なく音質もよかった。ほかにも単焦点プロジェクターを持ち込んで、映像を楽しむことも簡単にできます」
実体験で学びながらアップデートしていくのがEV・PHEVキャンプの醍醐味
キャンプシーンが盛り上がりを見せてはいても、EV・PHEVキャンプを実践している人はまだ少ないのが実情です。本格キャンパーからすると“中途半端”に見えるかもしれません。しかし、ダリィさんは「他人の目は気にする必要ない」と語ります。
「どのようなキャンプライフを過ごすか、それはそれぞれの人の自由です。ギアにこだわる本格的キャンパーの人がいれば、私のように手軽さや便利さにこだわるEV・PHEVキャンプの実践者もいます。スタイルはその人が決めることで、どんなキャンプであっても、本人が楽しければそれが正解だと思います」
そして、ダリィさんがEV・PHEVキャンプを楽しむためのコツとしてもうひとつ挙げるのが「失敗を恐れないこと」です。
「キャンプの装備にしても、私のやり方が正解とは限りません。たとえば、以前キャンプに電子レンジを持っていったことがあるのですが、さすがに重くてかさばり過ぎたので『失敗した』と思ったことがありました。このように、実体験で学びながら自分好みにアップデートしていくのがキャンプの醍醐味です。私自身、さまざまな失敗を重ねながら現在にいたっています」
EV・PHEVに乗っている人は、気軽にキャンプに出かけてみてはいかがでしょうか。ダリィさんを見ればわかるように、そうした手軽さもEV・PHEVキャンプの楽しみ方のひとつなのです。
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