コスト面や滑らかな走りで定評のあるEV(電気自動車)。車選びの候補のひとつとして意識している人も多いと思いますが、実際のコストや使い勝手はどうなのでしょうか? そこで、EV DAYSではEVオーナー101名を対象に、独自のアンケート調査を実施。EV購入の決め手と、実際の満足度について聞きました。
オーナー100人調査「EV購入の決め手は何でしたか?」
今後の普及拡大が確実視されているとはいえ、現時点では車の購入時にEVを選ぶ人はまだそれほど多くありません。
そうしたなかで、EVオーナーのみなさんはなぜEVを選んだのでしょうか? まずは「EV購入の決め手になったこと」トップ7を紹介します。
〈調査概要〉
対象:EVを所有している20〜60代の男女101名
協力:ネオマーケティング
EVオーナーに聞いた「購入の決め手」TOP7
ご覧のように、上位には「ランニングコストが安い」「環境にやさしい」「初期コストが安くなる」などの理由が並びました。ベスト5までそれぞれに票を入れた方のコメントとともに細かく見ていきましょう。
1位「ランニングコストが安い」
もっとも多くのEVオーナーが購入の決め手として挙げたのは「ランニングコストが安い」という理由です。
車を所有するには、車両の購入代のほかに、燃料代(EVの場合は充電代)やメンテナンス代、消耗品代や税金など、車を維持していくためのコストが継続的に発生します。こうしたランニングコストでEVとガソリン車を比較すると、EVのほうが相当安くなることが大半です。
■EVオーナーの声
「ガソリン代もかからない、オイル交換がないなどメンテナンス費用も安いから」(55歳・男性)
「ガソリン車に比べて毎月の出費が2万円以上安くなると試算された」(63歳・男性)
「費用対効果が間違いない」(36歳・女性)
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2位「環境にやさしい」
ランニングコストの次に購入の決め手として挙げる人が多かったのは「環境にやさしい」という理由です。
日本は諸外国に比べて環境意識が高くないと思われがちですが、内閣府が2020年11月に行った「気候変動に関する世論調査」1)では、有効回収数1767人のうち、9割近くが環境問題に「関心がある」と答えています。
今回のアンケート調査でも「地球環境保護は強く意識しました」(40歳、男性)など、上記の世論調査の結果を裏付けるようなコメントが目にとまりました。
走行中にCO2(二酸化炭素)を排出しないEVがガソリン車などに比べて「環境にやさしい」のは言うまでもありません。CO2だけでなく、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素化合物)などの大気汚染物質も出さないのです。環境意識の高まりとともに、EVを選ぶ人も増えつつあるようです。
■EVオーナーの声
「地球温暖化防止に役立ちそうだと思ったから」(50歳・女性)
「孫の世代が暮らしやすくなる世界を願って」(67歳・男性)
「できるだけ環境に負荷をかけない生活をしたいと考えたから」(67歳・男性)
参考資料
1)内閣府「気候変動に関する世論調査」
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3位「初期コストが安くなる」
ガソリン車に乗っている人は、EVに対して「車両価格が高い」という印象を持っているかもしれません。2021年現在では、確かにそのとおりなのですが、EVは購入・所有にあたり税制優遇措置があるほか、国や自治体が交付する補助金も活用できます。
車種やグレードによって補助金の金額は変わりますが、条件次第では合計で100万円以上を受け取ることも可能となるため、やや値の張るEVも購入しやすくなるわけです。
■EVオーナーの声
「補助金を使うと普通車に近い金額となって、トータルコストとしては断然安い」(54歳・男性)
「補助金のメリットが大きい」(63歳・男性)
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4位「加速がいい」
EVというと、コストの安さや環境性能ばかりに目を向けがちですが、走りでもガソリン車にない特徴を持っています。その特徴のひとつは加速性能です。
EVの動力となるモーターは発進時から一気に最大トルク(回転力の最大値)を発生する特性があり、その発進加速はオーナーにこれまで体験したことのない感覚をもたらします。加速性能に魅力を感じてEVの購入を決めた人がいるのもうなずける話でしょう。
■EVオーナーの声
「お試しで数日間借りたときの車のパフォーマンスに感動した」(53歳・男性)
「ガソリン車と違って最初からフルパワーで加速できる」(67歳・男性)
5位「走りが滑らかで音や振動が少ない」
加速性能とともに、走りの面でEVの特徴となっているのが走行中の「静かさ」「振動の少なさ」です。この2つを購入の決め手に挙げる人も見受けられました。
EVはモーターによって動き、ガソリン車のように大きな音が出るエンジンを搭載していません。そのため排気音もなく、運転中も風切り音とタイヤの走行音ぐらいしかしない快適な室内空間をもたらします。また、早朝や深夜の住宅街でも周囲の方に迷惑をかけることなく車を走らせることができます。
さらに、モーターはエンジンのような振動がないので、発進時や加速時も驚くほど走りが滑らかです。とくに女性のオーナーに「静かさ」「振動の少なさ」をEV購入の決め手として挙げる人が多いようでした。
■EVオーナーの声
「素早い加速と静粛性を兼ね備えた車が欲しかったので」(68歳・男性)
「加速したときの静かさは、ガソリン車では味わえない」(69歳・男性)
「EVの満足度は100点満点中何点ですか?」
ここまで見てきたように、購入の決め手で大きく挙げられたのは、「コスト」と「性能」と言えるでしょう。では、EVを実際に所有してみて、オーナーの方たちはどのように感じたのでしょうか?
EVを使って感じた満足度について、「購入コスト・維持コスト」「車両の性能」の2つの側面から点数をつけてもらいました。
コスト・性能の満足度は平均76〜77点
今回のアンケート調査では、以下の基準に沿って、100点満点で満足度を採点してもらいました。
■採点基準
点数 | 基準 |
100点 | 大満足(不満は全くない) |
75点 | それなりに満足(不満な点も少しある) |
50点 | 満足と不満が半々 |
25点 | それなりに不満(満足する点も少しある) |
0点 | 不満(満足する点が全くない) |
その結果が、以下のとおりです。
コストと車両性能は76〜77点という結果に。大満足とまではいかなかったものの、「それなりに満足(不満な点も少しある)」ということです。少なくとも、多くのオーナーは、EVライフにそれほど不満を感じていないと言えるでしょう。
オーナーたちのリアルな感想は?
それでは、EVオーナーがコスト面に関して実際にどう感じているか、具体的なコメントを見てみましょう。
EVオーナーの意見「購入コスト・維持コスト」
EVオーナーのみなさんから、フリーコメントを募ったところ、「やはり維持費が魅力的だと思います」(36歳・女性)、「維持費が安い」(69歳・男性)など、EVの維持コストの安さに満足しているという声が多く寄せられました。
しかし、その一方、購入コストに言及する声はほとんどありませんでした。補助金が使えるとはいえ、元々のEVの車両価格がやや高いため、大満足とまではいかなかったのかもしれません。
■EVオーナーの声
「コストパフォーマンスが素晴らしい」(54歳・男性)
「燃料代がガソリンよりもかからない」(60歳・男性)
「もちろんガソリン代よりずっとおトク。近くにたまたま充電施設ができて、買い物のついでに充電できる」(58歳・女性)
EVオーナーの意見「車両性能」
EVの車両性能について、コメントはおもに2つの点に集中しています。その2点とはEVの「充電」と「航続距離」に関することです。
たとえば、「自宅で充電できる」(36歳、男性)、「家の周りに充電箇所が多くあり、充電では困らなかった」(53歳・男性)など、充電場所や充電時間については満足しているとのコメントが多くありました。
また、「意外と航続距離が気にならなかった。200〜300km程度の航続距離があれば日常の使い勝手は十分」(52歳・男性)というコメントがある反面、「航続距離が短いので、マイナス10点」(61歳・男性)と、EVの航続距離については不満だとする声もチラホラありました。
個人差はあるようですが、こうしたEVの持つ課題が「それなりに満足(不満な点も少しある)」という結果に現れたようです。
■EVオーナーの声
「想像以上によい加速性能だった」(61歳・男性)
「普段運転する上で、何も問題がないが、遠出の際には充電スポットと充電時間を踏まえた計画が必要」(43歳・男性)
「電気だけでこんなに走れるかと驚いた」(24歳・男性)
「環境負荷が少ない、かつ遠出しなければ不便を感じない」(67歳・男性)
EVライフの満足度を上げるために必要なこと
アンケート結果を見るかぎり、オーナーの多くがEVの使い勝手やコストに概ね満足していることがわかりました。しかし、航続距離など、オーナーが不満を抱えがちなポイントがあることも事実のようです。
では、すでにEVを使っている人、これからEVを購入する人がEVライフをより充実させるためにはどうすればいいのでしょうか?
EVをはじめとして、これまで1万台を超える車種に乗り、試乗レビューを行っているモータージャーナリストの岡本幸一郎さんに、EVライフの満足度を向上させるために必要なことについて教えてもらいました。
「不安を抱えがちなのは『長距離走行時』。でも、少しの工夫で満足度は上がるはず」
「ガソリン車からEVに乗り換えたときに多くの人が戸惑うポイントは、おもに『航続距離』と『外出先の充電』でしょう。
通勤や買い物、子どもの送迎などの短距離の移動では航続距離は気にならず、むしろスムーズな走り心地や自宅での充電など、EVが持つメリットを強く感じるはずです。
しかし、週末などに片道100kmを超えるような長距離を移動するときは、ガソリン車との使い勝手の違いを大きく意識することになります。
EVは進化を続けていて、最近では一充電あたりの航続距離が400kmを超える車種も多くなっています。ただ、高速道路を高めの車速で走ったり、暖房をつけたりすると、電力消費が思った以上に早くなります。
そうすると、外出先の充電スポットを利用することになるのですが、それにあたっては充電スポットを探すことが必要です。充電スポット自体の数は少なくないのですが、高速道路のサービスエリア(SA)などでは充電器の順番待ちで『充電渋滞』している可能性もあります。
そのため、ストレスなく余裕をもって長距離を走るためには、目的地までの経路のどこに充電スポットがあるのか、あらかじめ複数の充電スポットを調べておくことが重要になります。ちなみに、充電スポットは検索アプリやナビなどで手軽に調べることができます。
外出先の充電と航続距離の問題を除けば、EVはメリットばかりです。EVで長距離を走行する場合にはコツがあるとあらかじめ理解していれば、大きな不安や不満を感じずに済むのではないでしょうか」
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工夫すれば、EVライフの満足度は益々上がるはず!
アンケート結果からわかったように、オーナーの多くがEVのコストや性能にそれなりに満足しているようです。
なかには、不満を覚える方もいるようですが、岡本さんのアドバイスのとおり、工夫次第で満足度も上げられることでしょう。また、今後のEVの普及や進化により、手頃な価格の車種の充実やバッテリー性能の向上も進み、気になるポイントは徐々になくなっていくことが予想されます。
実際にEVを購入しようか迷われている方は、ぜひ今回のアンケートを参考にして、検討を進めてみてください。