太陽光発電は環境にやさしく、自家消費すれば電気代がおトクになるなどさまざまなメリットがあります。補助金の恩恵も得られるので、導入を考えている人も多いことでしょう。ただ、ひとつ気になるのは「ソーラーパネルを設置すると屋根が傷む」との心配の声があることです。真偽について太陽光発電の施工のプロに聞いてみました。
※この記事は2022年3月23日に公開した内容をアップデートしています。
- 「太陽光発電の設置で屋根が傷む」は本当?
- 太陽光発電の設置で雨漏りしやすくなる?
- 太陽光発電の設置前にやっておくべきこと
- 太陽光発電の施工を依頼する業者選びのコツ
- 正しく施工してくれる業者を選び、太陽光ライフを始めよう
「太陽光発電の設置で屋根が傷む」は本当?
太陽光発電では、屋根に取り付ける「ソーラーパネル」で電気をつくります。このソーラーパネルの設置によって屋根が傷む可能性はあるのでしょうか。
太陽光発電設備の施工など、環境にやさしい製品の販売や修理を行っているムサシノ電機さんに聞き取りした情報をもとに、ソーラーパネルの設置によって屋根が傷むリスクを2つのケースから紹介します。
【この記事の取材先】
ムサシノ電機株式会社
ムサシノ電機(埼玉県狭山市)さんは、創業59年を迎え、エコキュートをはじめ、IHクッキングヒーターなどの設置・交換からキッチン・トイレなどの水回りまで、地球環境にやさしい製品を幅広く取り扱っています。社屋にも太陽光発電設備を設置しており、環境にも配慮した事業運営を行っています。また、お客さま第一の姿勢で東京電力エナジーパートナー株式会社提携店としても活動していただいています。
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ケース➀「屋根材一体型ソーラーパネル」の場合
ソーラーパネルには、大きく分けて屋根と一体になった「屋根材一体型」と、屋根の上に取り付ける「屋根置き型」の2種類があります。
このうち屋根材一体型ソーラーパネルは、屋根材に太陽電池セル(※1)を組み込み、屋根自体がソーラーパネルになっているタイプを指します。設置の際に現場で複雑な施工をする必要がないため、屋根への負担が少なく工期も短縮できるというメリットがあります。
そうはいっても「屋根が傷む可能性もあるのでは…?」と心配する方もいるでしょう。ムサシノ電機さんによると、屋根材一体型ソーラーパネルの施工では、屋根材の下に防水機能をもったシート「ルーフイング」を敷き詰める作業を行い、そこにパネルを直接留めていくような工事を行うといいます。
このシートは雨漏りを防ぐためのもので、屋根材のすき間から侵入してくる雨水を下地に染み込ませないようにする役割をはたします。屋根ではなくシートにソーラーパネルを留めるわけですから、設置時に屋根に直接穴を開けることもありません。
ムサシノ電機さんによると、屋根材一体型ソーラーパネルを設置することによって屋根が傷む可能性はほとんどないといいます。
※1:セルは太陽電池の最小の構成単位で、太陽電池素子のこと。セルを複数組み合わせ、樹脂や強化ガラスで保護したものをソーラーパネル・太陽光パネルという。
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ケース②「屋根置き型ソーラーパネル」の場合
もうひとつの「屋根置き型」の場合はどうでしょうか。屋根置き型の施工では、まず屋根材の上にソーラーパネルを支える架台を配置し、さらにその上にパネルを後付けで設置します。
架台で屋根が傷つくと思うかもしれませんが、このタイプも「屋根材一体型」と同様に、瓦などの屋根材に直接固定することはあまりありません。ムサシノ電機さんによると、屋根置き型ソーラーパネルが屋根本体に大きな負担をかけることはほとんどないそうです。
むしろソーラーパネルを設置すると、太陽の熱をさえぎる遮熱効果が高まったり、パネル下の屋根材が風雨にさらされにくくなったりと、別のメリットもあるといいます。
そもそも、太陽光発電設備には安全性を考慮した設計・施工ガイドラインがあり1)、ムサシノ電機さんによれば、ソーラーパネルの各メーカーがさまざまな屋根材ごとにガイドラインを細かく定めているそうです。その基準に従って正しくソーラーパネルを設置すれば、屋根が傷むようなことは考えにくいといいます。
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ソーラーパネルの重量はどれくらいあるの?
念のためにソーラーパネルのサイズや重量も紹介しましょう。住宅の屋根に取り付ける一般的なソーラーパネルは畳一畳分ほどのサイズで、パネル1枚あたりの重量は20kg程度です。
ソーラーパネルが住宅の屋根に与える荷重は分散されるため、屋根自体への負担はそれほど大きくないそうです。耐震性能が心配な場合は、ソーラーパネルを設置する際に屋根に与える影響を含めて、施工業者に相談するといいでしょう。
【コラム】太陽光発電の設置に向いている屋根は?
太陽光発電は、現在流通しているほとんどの屋根材に対応することができるようになっています。技術的にソーラーパネルを設置できない屋根も一部ありますが、かなりまれだそうです。
一方で、築年数の古い住宅ではソーラーパネルを設置できない場合があるといいます。おもに耐震強度の問題、瓦などの下に敷くルーフィングシートがしっかりしていないことが理由として挙げられます。築年数の古い建物の場合は、専門の業者に自宅の強度を確認してもらうことをおすすめします。
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太陽光発電の設置で雨漏りしやすくなる?
太陽光発電の設置で屋根が傷む可能性があるとするなら、当然「雨漏り」も心配になることでしょう。ソーラーパネルを設置すると本当に雨漏りしやすくなってしまうのか、先ほどと同様にムサシノ電機さんに聞き取りした情報をもとに解説します。
施工ガイドラインに則った方法ならほぼ雨漏りしない
太陽光発電設備の施工では、屋根置き型ソーラーパネルの設置後にまれに雨漏りするケースがあるといわれています。
しかし、前述のように、このタイプの施工では屋根材の上に架台を配置しますので、ソーラーパネルを屋根材に直接設置することはなく、屋根を傷めることもありません。つまり、信頼できる施工業者がソーラーパネルメーカーの施工ガイドラインに則って正しく設置を行えば、雨漏りを引き起こすような事態になることはほとんどないとムサシノ電機さんはいいます。
また、屋根材などに穴を開ける場合も、事前に屋根裏からきちんと調査を行い、穴を開ける場所に雨漏り防止のコーキング処理(※2)を施すため、雨漏りするようなことはまずないそうです。
※2:屋根材やその周りのすき間に、シリコンやウレタン、アクリルなどの素材でできた「コーキング剤」を充填して防水性や気密性を高めること。
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太陽光発電の設置前にやっておくべきこと
屋根が傷んだり雨漏りしたりなど、ソーラーパネル設置後のトラブルを避けるために大切なのは、既設住宅の場合、屋根材の状態や面積、住宅の耐震強度などを事前にしっかりと確認しておくことです。
事前のチェックを入念に行っておけば、ソーラーパネル設置後に起こりうるトラブルの多くを防ぐことができるはずです。ムサシノ電機さんでは、ソーラーパネルを設置する前に屋根裏に上って屋根の状態を内側からもしっかりと確認するそうです。
こうした事前のチェックを経て、屋根に何枚のソーラーパネルを取り付けられるかを計算し、パネル枚数に応じて固定するための金具の数が決まります。ムサシノ電機さんでは、金具を取り付けるときには墨出しし、垂木など住宅の骨組みに金具を打ち付ける場合がほとんどだといいます(※3)。
※3:ソーラーパネルの工事内容は、屋根の状況やメーカー、施工業者などにより異なります。
太陽光発電の施工を依頼する業者選びのコツ
太陽光発電の設置で「屋根が傷む」「雨漏りする」などのトラブルを避けるには信頼できる業者選びも重要です。ムサシノ電機さんによると、信頼して工事を任せられる業者の選び方のポイントは「実店舗がある施工業者かどうか」だといいます。
最近は店舗を構えずホームページだけ開設して営業する業者が増えていますし、悪質な業者による訪問営業も増加し、国民生活センターなどが注意喚起を行っています2)。
こうしたトラブルに遭わないためには「地域に深く根ざした業者を選ぶ」のが大きなポイントです。そうした施工業者なら“もしものとき”にも対応してくれますし、保証サービスもあるはずです。また、訪問営業を受けたとしてもその場で返事をせず、きちんと見積もりを取ることが大切だとムサシノ電機さんはいいます。
なお、ムサシノ電機さんでは10年間の製品保証に加え、同じく10年間の工事保証を用意しているそうです。工事保証は自然災害によって発生する太陽光発電設備へのトラブルなどもカバーしてくれます。毎年のように大きな災害が発生していますから、長期の製品保証・工事保証があると安心に繋がります。
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メンテナンスや保証付きで太陽光発電を導入する方法
東京電力グループが提供しているサービス「エネカリ/エネカリプラス」なら初期費用ゼロ円(※4)で太陽光発電を導入することができます。しかも、メンテナンスや保証もついているので、維持コストを含めて将来の家計を計画的に設計することができます。
「エネカリ/エネカリプラス」について詳しく知りたい方は以下のサイトをご覧ください。
※4:エネカリプラスは別途足場代等の費用がかかる場合があります。
正しく施工してくれる業者を選び、太陽光ライフを始めよう
太陽光発電は環境にやさしいだけでなく、自家消費すれば電気代の削減効果を期待でき、停電時も晴れた昼間なら電気を使うことができます。一方で、屋根に取り付けることから、屋根が傷ついたり、雨漏りしたりといったトラブルを心配する方も多いでしょう。
しかし、本記事で紹介したように、信頼できる業者がソーラーパネルメーカーの定めた基準に従って正しく工事をすれば、そうしたトラブルに遭うことはほとんどありません。信頼できる業者を選び、太陽光発電を導入してエコな暮らしを始めましょう。
※本記事の内容は公開日時点での情報となります