太陽光発電の導入を検討するとき、もっとも気になるポイントのひとつが「どのメーカーの太陽光パネルにするか」でしょう。ただ、メーカーのカタログには「変換効率(%)」という聞き慣れない数値が記載されています。「数値が高いほうがいい」とは感じますが、「変換効率」とは何なのでしょうか。変換効率の基礎知識、太陽光パネルを選ぶ際の考え方、発電量を増やすためのポイントなどを紹介します。
- そもそも、発電設備における「変換効率」とは?
- 太陽光発電は変換効率が低い? 「太陽電池」の進化も解説
- 太陽光発電の変換効率を比較するときの注意ポイント
- 太陽光発電の変換効率を向上させる環境・条件とは?
- 太陽光発電の仕組みを知り、おトクな生活を実現しよう
この記事の監修者
独ハーンマイトナー研究所客員研究員、米国国立再生可能エネルギー研究所客員研究員等を経て、現在、産業技術総合研究所安全科学部門主任研究員。著書に『トコトンやさしい太陽電池の本』『波に乗れ にっぽんの太陽電池』など。太陽光発電や電気自動車の使い方の研究に力を入れている。
そもそも、発電設備における「変換効率」とは?
太陽光発電の導入を検討しているときに、悩んでしまうのが太陽光パネル(ソーラーパネル)のメーカー選び、そしてメーカーごとに記載されている「変換効率○○%」という数値です。太陽電池の「変換効率」とは、いったいどのような意味なのでしょうか。
太陽光発電の変換効率は「世界共通ルール」で測定される
一般的に発電設備の効率(発電効率)とは、「発電するために投入した燃料のもつエネルギーのうち、電気に変換された割合」を意味します。
しかし、太陽光発電には燃料は必要なく、たとえば火力発電のように石油や石炭、天然ガスなどの燃料を燃やして蒸気を発生させ、蒸気タービンを回して電気を起こすわけではありません。太陽光パネルに当たった太陽の光エネルギーを直接、電気に変換しているのです。太陽の光エネルギーを電気に変えるものを「太陽電池」と言います。
太陽電池における発電効率とは、「太陽の光エネルギーをどれくらい電気に変換したかを示す割合」を表しています。
太陽電池のモジュール(太陽光パネル)は、季節や温度、日射の強度、パネルの角度などの条件により出力も変換効率も変化します。そこで世界共通の一定の条件のもとで測定した変換効率がカタログなどで使われます。
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太陽光発電の変換効率はどのくらい? ほかの発電方法と比較
変換効率の注意点やポイントを紹介する前に、太陽光発電の変換効率がどれくらいなのか、ほかの発電方法と比べてみましょう。
現在、国内では多くのメーカーの太陽光パネルが流通しており、それぞれ性能が多少異なりますが、一般的に変換効率(モジュール変換効率)は約20%となっています。これは世界共通の条件において、太陽の光エネルギーのうち、2割を電力に変換できるということです。
ほかの再生可能エネルギーの変換効率や発電効率は、風力発電が約30~40%、水力発電は約80%、地熱発電とバイオマス発電は約20%です。一方、火力発電は燃料の種類や細かい発電の仕組みなどによって数値に幅がありますが、約40〜60%の発電効率となっています。
〈表〉太陽光発電とほかの再エネの変換効率(発電効率)の比較
発電方法 | 変換効率または発電効率 |
太陽光発電 | 約20% |
風力発電 | 約30〜40% |
水力発電 | 約80% |
地熱発電 | 約20% |
バイオマス発電 | 約20% |
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太陽光発電は変換効率が低い? 「太陽電池」の進化も解説
火力発電の発電効率の数値と比べると「太陽光発電の変換効率はあまりよくない」と思うかもしれません。では、本当に太陽光発電の「効率」は悪いのでしょうか。
太陽光発電の変換効率はなぜ数値を低く感じるのか?
数値だけを見ると、たしかに火力発電などの発電効率に比べて太陽光発電の変換効率は低くなっています。しかし、この2つはそれぞれ違うものです。火力発電と異なり、太陽光発電は燃料ではなく、太陽光という無尽蔵で無料のエネルギーから電力を生み出します。
太陽電池は生産時や製品の運搬・設置、廃棄やリサイクル時にある程度の電力などのエネルギーを使います。しかし、そのようなエネルギーの量よりも、太陽光を吸収しながら何十年間も生み出される電力量のほうが何倍も大きくなります。火力発電と同じ測定方法で言えば、太陽光発電の「効率」は数百%になります。
このようにそれぞれ違うものなので、太陽光発電の変換効率と火力発電の発電効率の数値を比べても意味がありません。太陽電池同士で比べながら検討すれば大丈夫です。
パネル選びでは「モジュール変換効率」の数値に注目
太陽光パネルのカタログなどでは変換効率を「モジュール変換効率○○%」と記載しています。モジュールとは、太陽電池の最小単位の「セル」を複数組み合わせてパネル状に加工したもので、太陽光パネルのこと。つまり、モジュール変換効率とは太陽光パネル1枚あたりの変換効率を表したものというわけです。
前述のように変換効率を算出するときの測定条件は世界共通で、基準状態(STC)と呼ばれます。モジュールの温度や照射する光の強さ、スペクトル(色ごとの光の強さ)などが細かく定められています。そのため、モジュール変換効率の数値は国内や海外など太陽光パネルが製造された地域に関係なく比較することが可能です。
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太陽光発電の変換効率は年を追うごとに進化している
太陽光発電は世界全体の設備量が1TW(テラワット)を超え、世界の発電量の約5%を供給するようになりました。それにともなって太陽光パネル自体も進化し、変換効率も年々向上しています。
太陽電池に使われる材料にはさまざまなものがありますが、住宅用として現在販売されている太陽光パネルの場合、その大半で身の回りの電子機器でも広く使われている結晶シリコンが採用されています。
結晶シリコン型の太陽電池(セル)の変換効率の世界記録は現在26%程度ですが、「ペロブスカイト」と呼ばれる日本発の材料と組み合わせることで32%を超えるものも開発されています。また、宇宙用に使われている「多接合型」と呼ばれる太陽電池には変換効率が40%近いものもあります。
〈図〉太陽光パネルの種類別変換効率の推移
今後も太陽光発電の技術開発は進み、同時に住宅用の太陽光パネルの変換効率もさらに向上していくと予想されています。
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太陽光発電の変換効率を比較するときの注意ポイント
太陽光パネルを選ぶときに重視するポイントは、変換効率や発電量、価格や外観など、人それぞれです。太陽光パネルを比較するときに注意したいポイントをまとめました。
住宅用太陽光パネルの変換効率の目安は「20%」
太陽光パネルの変換効率は年々向上しており、2023年2月現在、平均的な住宅用太陽光パネルの「モジュール変換効率」は約20%となっています。太陽光発電でより多くの発電量を得たいという人は、この数値をひとつの目安にするといいでしょう。
ただし、一般的に変換効率の数値が高い太陽光パネルほど価格も高くなっていく傾向があります。また、太陽光発電の導入にはパネルに加え、パワーコンディショナーや架台などが必要ですし、施工業者に設置工事を行ってもらう必要があります。変換効率と太陽光パネルの価格、そのほかのコストのバランスを考えながら検討することが大切です。
自分の家の屋根に合ったサイズの太陽光パネルを選ぶ
いくら変換効率の高い太陽光パネルを選んでも、自宅の屋根のサイズや形状に合っていなければ、設置できる面積が少なくなってしまいます。太陽光パネルの合計の面積が少なければ、その分得られる発電量も少なくなります。変換効率の数値だけにこだわるのではなく、太陽光パネルの合計の面積にも注意するべきでしょう。
たとえば、最近は長方形だけではなく、三角形や台形の太陽光パネルも販売されています。自宅の屋根の形状に合った製品を選ぶことで、より多くのソーラーパネルを設置し、結果的にたくさん発電できる場合があります。
複数の業者から見積もりをもらって比較する
太陽光発電というのは、一度設置したら数十年単位の長期間にわたって使うことになります。導入するときはどれくらいの出力の太陽光パネルを設置できるか、周囲の建物や樹木といった物体の影の影響があるか、どのくらいの発電量を期待できそうか、どのような保証があるかといったことを確認し、また複数の業者から相見積もりを取り、即断せずにじっくり検討することが大切です。
太陽光パネルを選ぶときに変換効率が重要なポイントであるのは間違いありませんが、自宅の屋根に合った製品を選んで発電量のシミュレーションを行ってもらい、相見積もりを取ることなども、同じくらい重要なポイントと言えます。
太陽光発電の変換効率を向上させる環境・条件とは?
太陽光発電の変換効率は一定の条件のもとで算出されます。パネルを設置する角度や周囲の物体の影響、積雪などによっては発電量が少なめになるケースもあります。発電量を増やすにはどんな環境や条件が必要なのでしょうか。
太陽光パネルを設置する「向き」と「傾き」が大切
まず考えなければいけないのが太陽光パネルを設置する「(方位)方角」と「傾斜角」です。方位は南向きに設置するとより多く発電します。
〈図〉東京における斜面日射量と設置方位・傾斜角の関係
傾斜角については、地域によって発電効率が最大化できる角度が異なります。たとえば東京の場合、上の図のように「真南向き」「約30度の傾斜」で設置すると発電量が最大になると期待できます。
雪や汚れにも注意が必要です。傾斜角を低くしすぎると汚れが雨で流れにくくなりますので、傾斜角は最低10~15度以上つけることが推奨されています。一方、積雪地では雪が落ちやすいように大きく傾けて設置したり、壁などに垂直に設置したりする場合もあります。
また、太陽光パネルを設置する際には、パネルの反射光がご近所の迷惑にならないかどうかも注意したほうがいいでしょう。
太陽光パネルに建物や樹木の影がかからないよう注意
太陽光発電は太陽の光を受けて発電するわけですから、太陽光パネルに建物や樹木などの影がかかると発電量が減少してしまいます。そのため、なるべく影がかからない位置に太陽光パネルを設置する必要があります。何十年もの間に樹木が大きく育って影を落とさないかどうか、周囲の植栽にも注意したほうがいいでしょう。
周囲の建物などから影がかかる場合、その影響まで考えて発電量の見積もりを出してくれる業者を選ぶことも大切です。
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太陽光パネルにも定期点検やメンテナンスが必要
太陽光発電の導入を考えている人のなかには、「太陽光パネルを設置してしまえばメンテナンスは不要」と思っている人もいるかもしれません。たしかに太陽光発電は比較的メンテナンスが少なくて済む発電方式ではあります。
しかし、住宅用といっても立派な発電所ですから、たとえばいつの間にかネジが緩んでいたりすると、強風でパネルが飛ぶかもしれません。動物が設備を痛めたりすれば、故障や火災の危険も考えられます。また、壊れないまでも、落雷などでいつの間にか自動停止し、発電の機会を逃すこともあり得ます。
導入後は日ごろから発電状況を確認し、たとえば年1回ぐらいは設備の点検も実施することをおすすめします。メーカーや施工業者のアフターサービスの内容も確認しておいたほうがいいでしょう。
また、定期点検のたびに足場を組むと費用が高くなります。そうならないようにするために、設計段階からメンテナンスしやすい形で太陽光パネルを設置する工夫も有効です。
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太陽光発電の仕組みを知り、おトクな生活を実現しよう
太陽光発電の仕組みを知り、発電量を最大化するポイントについて理解すれば、太陽光発電導入を検討する助けになるでしょう。太陽光発電を上手に活用すれば、その分、環境にも家計にもやさしい暮らしを送れるでしょう。
東京電力グループが提供している「エネカリ/エネカリプラス」というサービスなら、初期費用0円※で太陽光発電を導入することができます。こうしたサービスを積極的に活用しながら、おトクでエコな暮らしを実現しましょう。
初期費用をかけずに太陽光発電を導入する方法
太陽光発電を自宅に導入したいけれど、初期費用はかけたくない。そのような場合は、東京電力グループが提供しているサービス「エネカリ/エネカリプラス」がおすすめです。初期費用0円※で自宅に太陽光発電や蓄電池などを導入できるうえ、設置からメンテナンス、保証もつくため、維持コストも含めて将来の家計を計画的に設計することができます。
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