プリウスPHEV。美しく生まれ変わった、元祖国産エコカーの本気度

新型プリウスPHEV

「21世紀に間に合いました」というキャッチフレーズで1997年に誕生し、世界中にハイブリッド車を広めたプリウス。その一歩進んだカタチとして、2012年に登場したのがプリウスPHVでした。当時はプリウスとは別機種という位置付けでしたが、2023年、5代目となった新型プリウスでは最上級グレードとして、名前も新たにプリウスPHEVとなってフルモデルチェンジ。モータージャーナリストのまるも亜希子さんがレポートします。

ハイブリッドが当たり前になった時代だからこそ、「もう一度ハイブリッドを生まれ変わらせる」というトヨタのエンジニアたちの強い意志のもと、生み出された新型プリウスPHEVは、いったいどんな魅力を手にしているのでしょうか。今回はクローズドコースで試乗したプロトタイプをレポートしていきます。

まるもさんとプリウスPHEV

 

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●Check1:エコノミカル

EVとしての航続距離は87km。近所の移動はEVで


新型プリウスPHEVに初搭載となった2.0Lエンジン+第5世代ハイブリッドシステムにより、13.6kWhと大きく容量を増したバッテリーと相まって、システム最高出力は歴代最強の223psを達成。そのため、モーターのみの航続距離も従来比1.5倍となる87km(19インチタイヤ装着時)となっています。先代モデルはバッテリー容量8.8kWhでEV航続距離は60km(WLTCモード)でしたが、実際に一般道と高速道路で試したところ、40km以上の走行ができました。

プリウスPHEV

 

新型はさらに距離が延びていますから、たとえば東京駅から羽田空港までが往復で35kmほどなので、従来は1往復しかできなかったところを、新型は2往復できるくらいの進化を遂げていることになります。繰り返し充電すれば、日常の多くの走行はEVとして利用できるのではないでしょうか。

プリウスPHEV

 

充電は、RAV4 PHEVなどトヨタのほかのPHEV同様、普通充電のみに対応。先代モデルでは急速充電に対応していましたが、新型では非対応になりました。充電時間の目安は、家庭に普及している一般的な普通充電器で、満充電まで約4時間となっています。

 

●Check2:プライス

価格は460万円。国産車らしい抑えたプライスレンジに


プリウスPHEVの価格は460万円です。同グレードとなるプリウスのZが370万円なので、90万円ほどの差がありますが、同様のボディタイプではメルセデス・ベンツA250eセダンが640万円ほど、BMW 330eセダンが710万円ほどということを考えると、リーズナブルに感じられます。

プリウスPHEV

 

また、令和5年度もPHEVは引き続き国からクリーンエネルギー自動車導入促進補助金が受けられる見込みです。さらに各地方自治体でも独自に補助金を設定する場合がありますので、購入時にはお住まいの自治体に問い合わせてみましょう。さらに、購入時と1回目の車検時にかかる自動車重量税が免除されるほか、環境性能割も非課税、自動車税も減税されます。

 

 

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●Check3:ユーティリティ

スポーツカーライクな印象ながら、使い勝手はさすがプリウス


先代のプリウスとプリウスPHVは内外装が大きく異なっていましたが、新型プリウスPHEVはやはり「プリウスの中の1グレード」という位置付けのため、エクステリアではアルミホイールのデザインと、リヤのバッジが変わるくらい。

プリウスPHEV

 

インテリアにいたっては、違いが見つけられないくらいです。ルーフのピークを後方に持ってきた流麗なスタイリングのため、Aピラーがかなり傾斜しており、乗り降りの際には頭をぶつけないように気をつける必要はあるものの、座ってしまえば室内はゆったり。

プリウスPHEV

 

Cピラー付近に配置しているリヤのドアノブには、ほとんど力を入れなくてもカチッと一発で開けられる、バックドアのようなスイッチ式を採用しています。

乗車するまるもさん

 

インテリアのデザインはシンプルですが、照明付きのグローブボックスや、横並びのカップホルダー、Zグレードではワイヤレス充電にもなっているサイドスリットトレイ、ボトルが入るドアポケット、カードやコインなどをサッと置けるトレイなど、収納スペースの使い勝手は良さそう。ラゲッジ容量は345Lと、ハイブリッドモデルよりやや容量は小さくなりますが、6:4分割の後席を倒すと段差が残るプリウスに対して、PHEVはちょうどフラットになるので荷物の積み込みがしやすいと思います。センターコンソール後部とラゲッジ左側にAC100V/1500Wのコンセントがあり、非常時給電システムが標準装備となっています。

荷室

 

●Check4:エモーショナル

低重心化が走りに貢献。パワフルな加速に驚き


従来の1.8Lエンジンから2.0Lに排気量がアップしたプリウスPHEVは、発進直後から地を這うような接地感で、まるでスポーツカーに乗っているかと錯覚するようなパワフルな加速フィールにびっくり。従来は荷室下に置かれていたバッテリーが、後席の床下に搭載されたことで低重心化され、前後重量配分もよくなっているということで、コーナリングも思った通りに弧を描くような気持ちのいい走りが楽しめました。

走行の様子

 

フロントのねじり剛性をアップするなど、ボディ全体の一体感が高まっていることや、静粛性がさらにアップしていることも印象的。サーキットの路面だったので、一般道に出るとまた印象は変わるかもしれませんが、乗り心地にも落ち着きがあり、ゆったりと座ることができました。

走行の様子

 

また、スタイリング重視でAピラーの傾斜がきつくなったプリウスPHEVですが、視界は従来よりよくなっているとのこと。確かに、コーナーのイン側が確認しやすく、後方も三角窓が見やすくなっていると感じました。これなら、日常での取り回しがしやすいのではないでしょうか。

 

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●Check5:ハウスベネフィット

普通充電に対応し、スマホとの連携も強化


プリウスPHEVの充電ポートは、右リヤフェンダーあたりに設置されています。これから自宅に充電器を設置する場合には、充電しやすい位置を考慮するといいですね。

充電口

 

新型は急速充電に対応していないことから、急速充電ポートを使用する、車両のバッテリーから家庭へ電力供給ができる「V2H」には対応していないと思われます。先代では対応していただけに、こちらは少し残念です。

車内前方

 

その代わりに、停電や災害などの非常時に車内のコンセントでクルマを電源として利用できる「非常時給電システム」が装備されています。バッテリー満充電・ガソリン満タン状態(HV給電モード)から、一般家庭における1日あたりの使用電力量を10kWhと仮定し換算すると、約5日分を賄うことが可能です。また、プリウスにはT-Connectスマートフォンというサービスがあり、自宅に居ながらスマートフォンを使ってクルマの状態を確認したり、エアコン操作できたりしますが、プリウスPHEVではさらに、充電のタイマー予約の変更や給電情報の確認などができるようになるようです。

 

太陽光発電のオプションも。トヨタの意地が詰まった新型

開発初期段階では、「タクシー専用車にしてもよいのではないか?」という意見も出ていたという、新型プリウス。でもやはり、これからも“愛車”として選ばれるクルマにしたいという強い想いが勝り、妥協のないデザイン、走り、使い勝手がベストな形で結実した1台になっていると感じました。

運転席に座るまるもさん

 

とくにプリウスPHEVには、1年間で走行距離約1250km分に相当する発電が可能という第2世代「ソーラー充電システム」も用意されており、EVでの航続距離も大幅に延びたことで、ハイブリッド+αではなく、よりEVに近いPHEVとしてオールマイティに使える存在となりそうです。

<クレジット>
撮影:堤 晋一

 

●家庭と暮らしのハマり度 総合評価

総合評価シート

 

【ギャラリー】

まるもさんとプリウスPHEV

 

プリウスPHEV

 

プリウスPHEV 後方

 

プリウスPHEV 荷室

 

プリウスPHEV

 

プリウスPHEV インテリア

 

プリウスPHEV 前席

 

プリウスPHEV 後席

 

プリウスPHEV

 

プリウスPHEV 走行の様子

 

プリウスPHEV 走行の様子

 

 

 

※本記事の内容は公開日時点の情報となります。

 

 

この記事の監修者
まるも 亜希子
まるも 亜希子

カーライフ・ジャーナリスト。映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、モータースポーツに参戦するほか、安全運転インストラクターなども務める。06年より日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。女性パワーでクルマ社会を元気にする「ピンク・ホイール・プロジェクト」代表として、経済産業省との共同プロジェクトや東京モーターショーでのシンポジウム開催経験もある。