JAIA試乗会で気になる5台のニューモデルEVにイッキ乗り!

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日本自動車輸入組合(JAIA)では毎年2月頃にメディア向けにインポーター合同の試乗会を主催しています。今回はEV DAYS編集部も初参加。比較的最近登場したEVモデル5台に試乗しました。モータージャーナリストの岡本幸一郎さんがレポートします。

 

 

日本自動車輸入組合=Japan Automobile Importers Associationの頭文字をとって、「JAIA」と書いて「ジャイア」と呼ぶ。JAIAは海外の自動車メーカーの正規輸入代理店で構成される業界団体であり、輸入車市場の健全な発展のために、諸統計の作成や共同展示事業、技術情報の提供等の事業を行なっている。その一環として、新しいモデルが出揃った毎年2月初旬に、神奈川県の大磯プリンスホテルでメディア向けに大規模な合同試乗会を開催している。

並んだ車両の前でポーズをとる岡本さん

 

そのJAIAの年初の発表によれば、2024年の海外メーカーの輸入車新規登録台数は前年比8.5%減の22万7202台と2年ぶりに減少したものの、EVは6年連続で過去最高を更新し、前年比5.7%増の2万4198台1)。輸入車全体におけるEVの比率も同1.5ポイント増の10.7%となり、初めて10%を超えた。

そんな中で、くだんのJAIA輸入車試乗会にEV DAYS編集部も初めて参加。2025年のEVの販売台数をさらに引き上げるかもしれない気になる5台のニューモデルに試乗してきたので、さっそくレポートしていこう。

 

 

ポルシェ マカン:“らしさ”が満載のスポーツカー的SUV

斜め前から見たマカン4

 

これまでも兄貴分のカイエンとともにポルシェの中で1、2を争う売れ筋モデルとして人気を二分してきたマカンが、初のフルモデルチェンジにより新型はEVのみに絞る方針とされた。800Vアーキテクチャーを備えた新開発の「PPE(プレミアムプラットフォームエレクトリック)」と、最新世代の永久励磁型PSM電気モーターを採用しているのが特徴だ。

前から見たマカン4

 

先進感のあるライト類のデザインが印象的で、ポルシェの伝統であるリアの「フライライン」は平らなリアウインドウと一体化した独特の形状となった。これまでにも増して4輪が大地に踏ん張るイメージが強調されたのには、EV専用化によるロングホイールベース&ショートオーバーハング化も効いているに違いない。全体としてよりスポーティでスタイリッシュになった印象を受ける。SUVでありながらCd値(空気抵抗係数)をわずか0.25に抑えたというのもたいしたものだ。

後ろから見たマカン4

 

華美さよりも実直であることをヨシとするコクピットの雰囲気もいつもながらポルシェらしい。眼前と中央だけでなく助手席にもオプションでディスプレイが配されたほか、AR技術によるヘッドアップディスプレイが装備されたのも新しい。物理スイッチができるだけ少なくされていて、全体的にスッキリとしていてわかりやすい。

マカン4のインパネ

 

このフォルムながら後席も意外と頭上に余裕があり、広大な荷室のほかに、フロントボンネット下にも荷物を積めるストレージ(フランク)が設けられている。また、オプションでラゲッジルームに100Ⅴソケットが付けられるのもEVらしく便利だ。

出力や駆動方式の違いによりいくつか用意されたグレードの中で、試乗した売れ筋となるであろう「マカン4」でも十分すぎるほどの動力性能を身につけている。好みに合わせて任意で常時ON/OFFできるオプションのエレクトリックサウンドも印象的だ。

マカン4のホイール

 

オプションのリアアクスルステアリング(後輪操舵)や、初の2バルブ技術を採用したダンパーを駆使したPASM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメント)が装着されていて、いかにもポルシェらしいスキのない操縦性にはさらに磨きがかかっている。回頭性は極めて俊敏で応答遅れがない。もはやSUVの形をしたスポーツカーのようなEVだ。

走行中のマカン4

 

それでいて乗り心地も非常によい。初代マカンではやや硬さを感じたものだが、新型はひきしまっている中にもしなやかさがある。選択したドライビングプログラムと連動して車高とドライブフィールがわかりやすく変わる。マカンなのにオフロードモードまで用意されていて、車高がグンと高くなる。

EV化により従来の4WDシステムの約5倍の速さでの作動を実現したePTM(電子制御ポルシェトラクションマネージメント)や、PTV Plus(ポルシェトルクベクトリングプラス)が搭載されているのもポイントだ。

〈スペック〉
ポルシェ マカン4

全長×全幅×全高 4784mm×1938mm×1622mm
ホイールベース 2893mm
車両重量 2330kg(空車重量 DIN)
モーター種類 交流同期式
システム最高出力 408ps(300kW) ※ローンチコントロール時
システム最大トルク 650Nm ※ローンチコントロール時
0-100km/h加速 5.2秒
最高速度 220km/h
バッテリー容量 100kWh
一充電走行距離 最大612km(WLTPモード)
タイヤサイズ 前235/55R20 後285/45R20
駆動方式 4WD
税込車両価格 1045万円

 

 

フィアット 600e:チャーミングなのに実用性も高い1台

斜め前から見た600e

 

おなじみの「500(チンクエチェント)」に対し、500の上に追加された「600(セイチェント)」は日本ではあまりなじみがない気もするが、実は海外ではけっこうメジャーな存在だ。現代の500のモチーフとなった往年の「NUOVA 500」の、さらにベースとなったのが、1950年代から60年代にかけて人気を博した初代600であり、今回登場した600はそのリバイバルとなる。

機構面では、2024年12月にEV DAYSでも紹介したジープ「アベンジャー」と並行して開発されたため共通性が高く、日本発売時点では最上位グレードのみ日本に導入され、カタログモデルの価格は600の方が5万円だけ高い。

500ともども、とにかくこのユニークなデザインこそ、このクルマの魅力そのものだ。愛嬌のある丸みのあるフォルムにチコちゃんのような半目のライト、各部に配されたブラックのアクセントや、ドットを意識したグリルの形状、凝ったデザインのダイヤモンドカットのアルミホイールが目を引く。細部にいたるまで「見せる」ことにこだわった印象を受ける。

前から見た600e

 

インテリアのアイボリーを基調とするユニークな丸形のメータークラスターや2スポークステアリングホイールなどは初代「600」に由来する。

600eのフロントシート

 

大きな「FIAT」のロゴと鮮やかなステッチがオシャレな、エコレザーを用いた6WAYパワーシートには、運転席にアクティブランバーサポート機能が備わる。このクラスの欧州車としては珍しくハンズフリーパワーリフトゲートも付いている。大型タッチパネルを備えたインフォテインメントはスマホとの連携が強化されていて、アプリを駆使して車両を遠隔から管理・操作することもできる。

遊び心のある内外装デザインとともに、後席や荷室の広さも十分に確保されていて、使い勝手も悪くない。

後ろから見た600e

 

156psのモーターと54kWhのバッテリーにより、速さはいまどきのEVとしては控えめながらいたって乗りやすく、航続距離はアベンジャーよりも空力がよいからか7km長い493kmと十分だ。

215/55R18とアベンジャーより1インチ大きいタイヤを履き、足まわりの印象も若干しまっていてキビキビ走れるあたりも600の持ち味だ。コンパクトなサイズでステアリングも軽いので、取り回しがよく、狭い道でも臆せず走れる。

走行中の600e

 

先進運転支援機能も完備されていて、車線内で設定した位置を維持するという独自のレーンポジションアシスト機能もある。「かわいい顔して、しっかりモノ」と謳っているとおり、遊び心があって、実用性に優れ、装備も充実している。こんなクルマはフィアットじゃないと出せっこない。

〈スペック〉
フィアット 600e La Prima

全長×全幅×全高 4200mm×1780mm×1595mm
ホイールベース 2560mm
車両重量 1580kg
モーター種類 交流同期式
最高出力 156ps(115kW)/4070-7500rpm
最大トルク 270Nm/500-4060rpm
バッテリー容量 54.06kWh
一充電走行距離 493km(WLTCモード
タイヤサイズ 前後215/55R18
駆動方式 FWD
税込車両価格 585万円

 

 

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ロータス エメヤ:怪物並みのパワーとゴージャスな乗り心地

斜め前から見たエメヤ

 

先だって同門のハイパーSUVであるエレトレを紹介したばかりだが、こちらもすごい。ロータスいわく、「ドライバーのためにデザインされたロータス初のエレクトリックグランドツアラー」だ。最新のテクノロジーにより、ハイパフォーマンスかつゴージャスでユーティリティも高く、EVとしての充電等の諸性能にも優れるという、恐るべき1台である。

前から見たエメヤ

 

最高性能版の「R」が見せる918psの加速はハンパじゃない。0-100km/h加速はなんと2.8秒以下と世界最速クラスを誇るとおり、ワープするかのような加速フィールに圧倒される。いまどき500ps級のEVはそれほど珍しくないが、やっぱり別物だ。

WLTPモードの航続距離はエントリーグレードで最大610kmに達しており、日本にはまだないが400kW(600A対応)の急速充電器を使えば、わずか14分で10→80%の充電が可能というのもすごい。2025年春時点で世の中でもっとも速く充電できるEVのうちの1台といえる。

後ろから見たエメヤ

 

5mをゆうに超える伸びやかなフォルムのボディには、随所に空力を向上させるための穴が設けられているのも特徴だ。ドアが自動開閉したり、ドアミラーに代えてデジタルミラーが配されていたり、多くの機能をセンターのディスプレイで操作できるようになっていたりもする。

エメヤの運転席

 

インテリアはロータスのスポーツカーとは正反対で、わかりやすく高級感が表現されている。後席の同乗者も、スポーツカーのような形状ながらマッサージなどさまざまな機能を備えたキャプテンシートにより快適に移動できる。

走行中のエメヤ

 

先進運転支援機能も現状でも極めて充実しているが、せっかく標準装備のLiDARが日本では規制により宝の持ち腐れになっているのがもったいない。

〈スペック〉
ロータス エメヤR

全長×全幅×全高 5139mm×2005mm×1464mm(21インチ仕様)
ホイールベース 3069mm
車両重量 2575kg
モーター種類 交流同期式
システム最高出力 918ps(675kW)
システム最大トルク 985Nm
0-100km/h加速 2.78秒
最高速度 256km/h
バッテリー容量 102kWh
一充電走行距離 435-485km(WLTPモード)
タイヤサイズ 前265/40R21 後305/35R21
駆動方式 4WD
税込車両価格 2268万2000円

 

 

MINI エースマン:EV専用として登場した、上質な仕上がり 

斜め前から見たエースマン

 

新しい世代になってまもないMINIファミリーには、定番のハッチバックの3ドア車にもEVがあるが、ハッチバックよりもひとまわり大きく、まったく新しい車名で登場したニューモデルは、MINI初のEV専用車だ。

日本でも扱いやすいサイズ感ながら、ハッチバックの5ドア車(発売時点ではエンジン車のみ)と比べてもトランクはやや広く、後席の居住性は圧倒的に上回り、絶妙にリフトアップされているので乗降性も良好だ。

前から見たエースマン

 

MINIの一員とひとめでわかりながらも内外装とも巧みに差別化されていて、丸みをおびた中にもカクカクとした意匠を多用したデザインは、ハッチバックとも上級のカントリーマンとも異なる独特の雰囲気を放っている。

エースマンのインパネ

 

インパネの中央に配された大きな円いタッチディスプレイには、さまざまな機能が盛り込まれていて、スマートフォン感覚で操作できる。さらには、「エクスペリエンス」と記されたドライブモードの選択により加速やハンドリングが変わるとともに、くだんのディスプレイやダッシュを光らせたり、独自の効果音により雰囲気を高めたりと、ビジュアルとサウンドの演出を楽しめるのも新世代MINIならでは。EV専用のエースマンでは、よりそれがわかりやすく表現されている。

走行中のエースマン

 

MINIの走りの醍醐味であるゴーカート・フィーリングも、EVとなったことでよりわかりやすく巧みに味付けされているのに加えて、エースマンにはハッチバックよりもワンランク上のプラットフォームが用いられているせいか、キビキビとした中にもしなやかさのある、より質の高い走りに仕上がっていた。

〈スペック〉
MINI ACEMAN SE

全長×全幅×全高 4080mm×1755mm×1515mm
ホイールベース 2605mm
車両重量 1740kg
モーター種類 交流同期式
最高出力 218ps(160kW)/7000rpm
最大トルク 330Nm/50-4500rpm
バッテリー容量 54.2kWh
一充電走行距離 414km(WLTCモード)
タイヤサイズ 前後225/45R18
駆動方式 FWD
税込車両価格 556万

 

 

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メルセデス-マイバッハ EQS SUV:最高峰の乗り心地

斜め前から見たマイバッハ EQS SUV

 

SUVのEVは数あれど、ひとつの頂点を極めたのがこのクルマだ。マイバッハというのは、20世紀前半頃に超高級車ブランド~超高性能エンジンメーカーとして存在したが、長い眠りから目覚め、メルセデスより格上の超高級ブランドとして復活した。その後はしばしのインターバルを経て、現在ではメルセデス・ベンツのサブブランドとなっている。

マイバッハ EQS SUVのフロントエンブレム

 

メルセデス版のEQS SUVをベースに、マイバッハの名のもとで送り出すからには、「上には上が…」ということを世のセレブリティに知らしめる必要がある。そこで、誰の目にわかりやすく豪華に仕立て、高性能なパワートレーンを積んで、走りも究極的に仕上げたのが、このクルマである。

マイバッハ EQS SUVのホイール

 

車両価格はベース車より1200万円近く高い2790万円であり、試乗車はそれに4座仕様とし、セレブが車内で冷えたシャンパンを楽しめるよう着脱可能な冷蔵庫まで付く「ファーストクラスパッケージ」が123万6000円、ピアノブラックのインテリアトリムが28万1000円、ナッパレザー仕様が224万7000円、ツートーンペイントが285万9000円、という計662万3000円分のオプションを追加した合計3452万3000円の個体となる。

マイバッハ EQS SUVの後部座席から見たフロントシート

 

走りのほうもすばらしいのひとことだ。あまりにもなめらかで静かでしなやかで、力強くて扱いやすい。3tを超える巨体が、とてもそうとは思えないほどスイスイと走れて、アクセルやブレーキも繊細に操作するとそのとおり応えてくれる。多少の凹凸があろうともなにも感じさせないほど路面をなめるかのようにスムーズに走れて、乗員にまったく不快な思いをさせることがない。

走行中のマイバッハ EQS SUV

 

堂々たるサイズでラグジュアリー感に満ちていて走りの仕上がりもこの上ない。まさしく路上のファーストクラスそのものだ。こうしたクルマを求めるセレブが世に存在し、メルセデスにはそのニーズに対応できる力がある。こうしたクルマを手がけるためにマイバッハブランドが存在するのだ。

〈スペック〉
Mercedes-Maybach EQS 680 SUV

全長×全幅×全高 5135mm×2035mm×1725mm
ホイールベース 3210mm
車両重量 3050kg
モーター種類 交流同期式
システム最高出力 658ps(484kW)
システム最大トルク 955Nm
バッテリー容量 118kWh
一充電走行距離 640km(WLTCモード)
タイヤサイズ 前後275/40R22
駆動方式 4WD
税込車両価格 2790万円

 

 

着々とラインナップが充実。今後にも大いに期待

EV全般の性能や利便性がますます向上するとともに、こうしてそれぞれのブランドの特色を活かしたEVがどんどん出てくるのは大歓迎だ。とくに一般向けから高嶺の花まで多くのブランドがひしめく輸入車の世界ではなおのこと。これからもあの手この手でEVに関心を持つユーザーを楽しませてくれるよう期待したい。

 

撮影:小林 岳夫

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

この記事の著者
岡本幸一郎
岡本 幸一郎

1968年富山県生まれ。父の仕事の関係で幼少期の70年代前半を過ごした横浜で早くもクルマに目覚める。学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作や自動車専門誌の編集に携わったのちフリーランスへ。これまで乗り継いだ愛車は25台。幼い二児の父。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。