最近よく見かける。中国発の「BYD」って、どんなEVメーカー?

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【連載「メーカーさんに聞きました。」第3回】国を挙げて「新エネルギー車」の普及に力を入れている中国では、EV普及率が20%を超えています。そんな中国発のBYDは2022年にはEV・PHEV合計の販売台数で世界No.1(※)となっています。とはいえ、日本では2023年にEVの販売を開始したばかり。そこで、そもそもBYDとはどんなEVメーカーなのか、詳しく教えてもらいました。
※2022年1〜12月期の販売台数(マークラインズ調べ)

今回取材に伺ったのは、BYDの遠藤友昭さん。BYDの特徴を語っていただきました。

 

【今回の取材でお話を聞いた方】

遠藤友昭さん


遠藤友昭さん

BYD Auto Japanマーケティング部 部長。2023年8月入社、商品企画とマーケティングコミュニケーションを担当する。BYD入社前はメルセデス・ベンツ日本をはじめとした欧州輸入事業会社にてマーケティング活動に従事。

 

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中国トップのEVメーカーが、ついに日本上陸

遠藤さん

 

EV DAYS編集部「2023年に日本市場でEV乗用車の発売を開始し、『BYD』というブランドは、車好きの間ではかなり知られるようになってきました。中国メーカーとのことですが、そもそもどんな会社なのでしょうか?

遠藤さんBYDは中国深圳市に本社を置くメーカーで、1995年に創業しました。もともとはパソコンや携帯電話などに搭載するバッテリーの製造を中心とする会社でしたが、長年培った独自のバッテリー技術を生かし、2003年にBYD Autoを設立し自動車市場に乗り出しました。現在、中国のEV市場ではトップシェアを誇り、欧州など海外にも輸出しています」

EV DAYS編集部「そして、いよいよ日本市場にも進出されたということですね」

EVバス

BYDはグローバルで累計約9万台のEVバスを納入しており、日本では路線バスとして最適な10.5mの大型EVバス「K8」や日本市場向けの小型EVバス「J6」などを展開

 

遠藤さん「当社の創業者である王伝福は、以前から日本の自動車市場や自動車産業を非常にリスペクトしていました。世界を代表する自動車メーカーがいくつも存在しますし、カーディーラーを通じてお客さまに懇切丁寧なセールスやアフターサービスを行っていること、お客さまの車選びや車のある生活が成熟していることなど、とても学ぶべきことの多いマーケットだからです。

そのため、かなり早い時期から日本市場への進出を検討しており、まずはEVバスなどの商用車から輸出を開始しました。おかげさまで、京都市や長崎のハウステンボスなど数多くのお客さまにEVバスを納入させていただき、満を持して2022年、EV乗用車の日本発売を発表しました」

 

 

日本市場に投入する3車種の特徴は?

ATTO3

日本発売モデル第1弾EV「BYD ATTO 3」。2023年1月に発売された

 

EV DAYS編集部「すでに日本で2車種を販売し、2024年にはもう1車種を投入する予定だとうかがっています。それぞれの特徴について教えていただけますか?

遠藤さん日本市場向けEVの第1弾として、2023年1月に発売したのがSUVの『BYD ATTO 3(アットスリー)』です。SUVは輸入車の中で最も売れ行きのよいカテゴリーなので、より多くの日本のお客さまに関心を持っていただけるのではないかと思い、最初に投入しました。

航続距離は470km、価格は440万円ですが、型式指定を受けているので購入時に国から85万円の補助金が支給されます。同じスペックの車種と比べると、かなりリーズナブルな価格ではないかと自信を持っています」

車内

一味違うユニークな内装は、“フィットネスジム×音楽”をコンセプトにしたデザイン

 

EV DAYS編集部「『BYD ATTO 3』は、見た目も非常に格好いいですね」

遠藤さん「当社は中国のEV市場で、デザインコンセプトが異なる『王朝』『海洋』という2つのシリーズを展開しています。『BYD ATTO 3』は『王朝』シリーズの代表車種で、フロントのデザインは中国皇帝の象徴であるドラゴン(龍)をモチーフにしています。

また、内装は“フィットネスジム×音楽”をコンセプトとしており、ダンベル状にしたエアコンの吹き出し口や弦を弾くと音を奏でるドアトリムなど、個性的なデザインを採り入れています」

EV DAYS編集部「独特の個性を持ちつつ、欧州車のようなラグジュアリー感も漂わせていますね」

遠藤さん「『BYD ATTO 3』だけでなく、BYDのすべての車種は、元アウディのチーフデザイナーがエクステリアデザインを、元メルセデス・ベンツのチーフデザイナーがインテリアデザインを担当しています。欧州車のようなテイストを感じるのは、そのせいかも知れませんね。性能はもちろんのこと、デザイン性や乗り心地のよさに至るまで、車としての魅力のすべてを徹底的に磨き上げるように努力しています」

dolphin

第2弾として投入された「BYD DOLPHIN」は、日本の都市部での普段遣いに適したコンパクトSUV

 

EV DAYS編集部「日本市場向けの第2弾として2023年9月に発売した『BYD DOLPHIN(ドルフィン)』は、どのような車でしょうか?」

遠藤さん「『海洋』シリーズの1つで、愛称のドルフィン(イルカ)をモチーフに丸みのある愛らしいデザインを採り入れたコンパクトEVです。日本では2番目のリリースですが、欧州など海外市場では最初に投入し、大好評を得ています。ドアの取っ手部分をイルカの手ビレのような形状にするなど、随所に遊び心のあるデザインを施しています。『まるで、イルカと握手するみたい』と喜んでくださるお客さまもいらっしゃいます。

スタンダードモデルとロングレンジモデルの2タイプを用意させていただいており、前者は航続距離が400km、価格は363万円。後者は476km、407万円です。いずれも購入時に国から65万円の補助金が支給されます」

SEAL

第3弾「BYD SEAL」は2024年春に導入予定

 

EV DAYS編集部「2024年に新たに投入するのは、どんな車種ですか?」

遠藤さん「スポーツセダンタイプの『BYD SEAL(シール)』というEVです。シール(アザラシ)という愛称からおわかりのように、こちらも『海洋』シリーズの1つで、日本市場では後輪駆動と四輪駆動の2タイプを発売する予定です。航続距離は後輪駆動タイプで640km、四輪駆動タイプは575kmと長距離走れるように設計されています」

 

 

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日本市場向けに機能などを搭載。販売方法に工夫も

EV DAYS編集部日本市場向けにEVを投入するにあたって、何か工夫は凝らされているのでしょうか?

遠藤さん「『BYD DOLPHIN』の中国向け、海外向けモデルの全高は1570mmです。しかし、日本には高さ制限を1550mmとしている立体駐車場が多いので、全高を20mm低くしています。EVと住宅との間で電気をやり取りするV2H(Vehicle to Home)や、コンセントへ給電するV2L(Vehicle to Load)にも対応しています。

また、輸入車では珍しくウインカーを日本車同様右側に設置していますし、ペダルの踏み間違え防止機能も搭載しています。ご高齢のドライバーが多い日本のニーズに応えました」

EVDAYS編集部販売方法も、日本市場のニーズに合わせているそうですね

遠藤さん

 

遠藤さん「海外メーカーのEVと言うと、インターネットによる直販を思い浮かべる方が多いようですが、BYDは日本のニーズに合わせて販売店を通じた対面での販売を行っています。販売店にお越しいただき、実際に車を見たり、乗ったりして、そのよさを確かめていただきたいと思っているからです。もちろん、代理店販売なので修理やサポートなどのアフターサービスも万全です

そもそも当社が日本市場で代理店販売を採用したのは、先ほども述べたように、創業者の王伝福が日本車の販売方法を非常にリスペクトしていたからです。2025年末までに日本全国で100店舗の代理店網を構築する目標を掲げていますが、おかげさまで準備段階の店も含めてすでに50店舗を超えました。日本での代理店を通じた販売経験は、中国国内や海外での販売にも必ず役立つと思っています」

 

 

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BYD最大の強みは独自開発の「ブレードバッテリー」

EV DAYS編集部「日本進出から1年足らずで50店舗以上とは、とても速いペースですね。これまでの販売実績はいかがでしょうか?

遠藤さんこれまでに『BYD ATTO 3』と『BYD DOLPHIN』の2車種で約1500台を受注・販売しています。BYDは中国ではEVのトップブランドですが、日本ではほとんど知られていなかった存在です。にもかかわらず、これだけの台数をお買い求めいただけたのは、かなり順調な滑り出しではないかと手応えを感じています」

EV DAYS編集部「順調な理由は何だと思われますか?」

遠藤さん「実際に乗ってみて、車自体の格好良さや、走りの質感、乗り心地のよさを実感していただけたからだと思います。乗ってみるとわかりますが、BYDのEVは車内がとても広々としていて、ゆったりと寛ぐことができます。これは、BYDが独自に開発したブレードバッテリーを搭載することで、車内空間を大きくできるからです」

バッテリー

ブレードバッテリーは、BYDが2021年に発表した最新型のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池。高い安全性、優れた航続性能などを特徴とする

 

EV DAYS編集部ブレードバッテリーとは、どのようなものですか?

遠藤さん熱安定性の高いリン酸鉄リチウムを使用し、刀のように長くて薄い形状にしたバッテリーです。床の部分に効率よく敷き詰められるので、一般的なEVバッテリーに比べてスペースの無駄を少なくできるのが特徴の1つです。BYDのEVはすべてこのブレードバッテリーを使用し、広々とした空間が確保できる『eプラットフォーム3.0』という車台を採用しています」

EV DAYS編集部「熱安定性が高いということは、バッテリーの発火や爆発などの危険も少ないということですね」

遠藤さん「おっしゃるとおりです。価格がリーズナブルなので、安全性を心配されるお客さまもいらっしゃいますが、バッテリーへの釘刺し実験など、いくつもの厳しいテストを繰り返しており、安全性の高さは証明されています。ぜひ安心して乗っていただきたいですね」

 

 

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この記事の著者
EV DAYS編集部
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