
「ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)」とは、走行時に二酸化炭素(CO2)などの排出ガスを出さない車の総称です。電気自動車(EV)だけでなく、燃料電池車(FCEV)も含まれます。本記事では、ZEVの定義や種類、世界・日本での規制や政策、メーカーの取り組み、購入時の補助金制度までをわかりやすく解説します。
- そもそも「ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)」とは?
- ZEVが世界で注目される理由
- 【世界の動向】ZEV普及を加速させる「ZEV規制」と各国の目標
- 規制と市場の間で岐路に立つ自動車メーカー
- EV普及における課題
- ZEV購入時に知っておきたい補助金制度
- ZEV移行期に求められる新たなロードマップ
そもそも「ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)」とは?

ZEV、すなわちゼロ・エミッション・ビークルとは、その名のとおり、走行時に排出ガスを一切出さない車両を指します。具体的には、窒素酸化物(NOx)・粒子状物質(PM)などの大気汚染物質やCO2などの温室効果ガスを、車両のマフラー(テールパイプ)から排出しないことがその定義となります。
ZEVはあくまで走行時の排出量がゼロであることを意味し、車両の製造過程や、燃料(電気や水素)の製造時における環境負荷を問うものではありません。
ZEVにはどのような種類がある?
ZEVには、EVとFCEVが含まれ、広義では水素エンジン車も含まれる場合があります。
EV(Electric Vehicle:電気自動車)

搭載された駆動用バッテリーに蓄えた電気のみでモーターを駆動して走行します。日本では一般的に「EV」と呼ばれますが、「BEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー式電気自動車)」と呼ばれることもあります。
FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle:燃料電池車)

高圧タンクに水素ガスを充填し、燃料電池で水素と空気中の酸素を化学反応させて発電し、その電気でモーターを駆動します。排出するのは水のみであるため、ZEVに分類されます。
水素エンジン車

FCEVと同じく水素タンクを搭載しますが、電気に変換するのではなく、水素をそのまま燃料としてエンジン(内燃機関)で燃焼させて走る車です。排出ガスにはごく微量のCO2とNOxが含まれますが、おもな成分は水蒸気であるため、ZEVとしてみなされる場合があります。既存のエンジンを流用でき、コストが抑えられるので、幹線輸送用長距離トラックなどでの実用化が有力視されています。
PHEVやHEVとの違い
PHEV(プラグインハイブリッド車)は外部からの充電が可能であり、バッテリーの電力だけで一定距離をEV 走行できます。そのため、日本やアメリカ、中国では、各種規制や統計において「EV」の一部として扱われる場合もありますが、バッテリー残量がなくなるとエンジンが稼働し排出ガスが出るため、一般的にはZEVの定義には当てはまりません。
また、外部充電機能を持たないHEV(ハイブリッド車)は、エンジンによって発電し、あるいはエンジンを動力源の一部として使用し排出ガスが出るため、ZEVには分類されません。
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ZEVが世界で注目される理由
ZEVの普及が徐々に進んでいるのは、地球規模の温暖化対策のためですが、その副次的な効果として、ZEVが搭載する大容量のバッテリーを蓄電池として活用する動きも出ています。
ZEVへの注目が高まっている背景にあるのは、各国が掲げるカーボンニュートラル目標の達成や、都市部で深刻化する大気汚染への対応、そしてエネルギー供給体制そのものを転換する大きな潮流です。さらに、車を電力インフラとして活用するV2G(Vehicle to Grid)への期待も高まり、ZEVは「移動手段」を超えた新たな社会基盤として位置付けられつつあります。ZEVにまつわるそうした動向について、具体的に見ていきましょう。
地球規模の「カーボンニュートラル」達成目標

世界的なZEVシフトの根底にあるのは、地球温暖化対策という世界共通の課題です。この課題に対して世界全体で取り組んでいくために合意されたのが「パリ協定」です。パリ協定は、2015年にパリで開かれた、温室効果ガス削減に関する国際的取り決めを話し合う「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で合意されました。この合意内容に基づき、CO2を削減するための旗印として、世界各国が「2050年までのカーボンニュートラル」を掲げることになりました。
この目標が、自動車産業に対して構造転換を迫る最大の圧力となっています。たとえば、世界のZEV規制をリードするカリフォルニア州は、2035年までに販売される乗用車のすべてをZEVに、2045年までに販売される中型・大型車のすべてをZEVにする、という目標を掲げています1)。
電力インフラを変革するV2Gへの期待

ZEV、特に大容量バッテリーを搭載するEVは、社会のエネルギーシステムを担う能力を秘めています。その鍵となるのが「V2G(Vehicle to Grid)」という概念です。
V2Gは、EVを電力系統(グリッド)に接続し、電力の需要と供給のバランス調整に活用する技術です。具体的には、電力の需給がひっ迫する時間帯にEVから電力系統へ放電したり、太陽光発電が余剰となる昼間にEVを充電したりするというものです。このときEVは蓄電池として機能し、天候によって出力が大きく変動する再生可能エネルギーの欠点を補う分散型エネルギーリソースとなります。
また、その前段階として「V2H(Vehicle to Home)」の実用化が進んでいます。これは、EVの電気を家庭用の電源として利用する技術で、災害による停電時などには非常用電源として機能し、家庭のエネルギーレジリエンス(強靭性)を高めます。
このように、V2G技術の普及によって、自動車の価値が大きく変わる可能性があります。自家用車は、平均で95%の時間は駐車されたままであると言われています。もしV2Gが社会実装されれば、駐車している間に蓄電池という役割を果たすことができ、また、EVオーナーの立場からみれば、その対価として電力会社などから収益を得られるようになるかもしれません。
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【世界の動向】ZEV普及を加速させる「ZEV規制」と各国の目標
ZEVへの移行は、市場のオーガニックな変化というよりも、各国の強力な規制と政策によって牽引されています。しかし、そのアプローチは地域によって大きく異なり、複雑で二転三転する要求への対応を自動車メーカーは迫られています。
ZEV規制のベンチマーク カリフォルニア州「ACC2」

世界で最も野心的なZEV普及の目標を掲げているのが、カリフォルニア州大気資源局(CARB)によるZEV規制です。
最新の規制「アドバンスト・クリーン・カーズII(ACC2)」は、州内で販売される新車のうちZEVが占める割合を段階的に引き上げることを義務付けており、2026年に販売するモデルで35%とし、2035年の販売モデルでは100%にする計画です。PHEVの販売も認められていますが、その比率はZEV販売台数の20%以下に制限され、かつバッテリーのみで50マイル(約80km)以上のEV走行が可能なPHEVでなければなりません2)。
カリフォルニア州の規制は、州を超えて広がっています。実際に、ニューヨーク州、マサチューセッツ州、ワシントン州、オレゴン州、ニュージャージー州、メリーランド州、コネチカット州、コロラド州、デラウェア州、メイン州、ニューメキシコ州、ロードアイランド州、バーモント州など、10以上の州がACC2規制の全部または一部を導入しています。これらの州を合わせると、米国新車市場全体の約3分の1から40%近くを占めることになり、巨大市場であるアメリカにおいて、このシェアは自動車メーカーが決して無視できない規模です。
しかしながら、この高い目標値にストップがかかりました。2025年6月、アメリカ連邦議会はカリフォルニア州が独自のZEV販売義務や排出ガス基準を設定する権利を撤回する決議を可決し、トランプ大統領がそれに署名しました3)。
この措置は、ACC2や大型車を対象とする「アドバンスト・クリーン・トラック(ACT)」規制を標的としており、これによってACC2は事実上キャンセルされ、自動車メーカーは長期的な事業計画の再編を余儀なくされています。
参考資料
2)CARB「California moves to accelerate to 100% new zero-emission vehicle sales by 2035」
3)日本貿易振興機構「トランプ米大統領、カリフォルニア州のZEV販売義務を撤回(米国)」
揺らぐ旗印。EUの2035年エンジン車禁止

EUは、2035年以降に販売される新車のCO2排出量を100%削減するという法案を成立させています。これは、ガソリン車やディーゼル車はもちろん、PHEVやHEVを含むエンジン搭載車の新車販売を事実上禁止するものです。カーボンニュートラル燃料である「e-fuel(合成燃料)」を使用する場合に限り、2035年以降もエンジン車の販売を認めるという例外規定が盛り込まれていますが、このe-fuelには厳しいルールが定められており、事実上のエンジン車販売禁止という点に変わりはありません。
この目標は当初、EU域内のメーカーや市場の団結を強め、カーボンニュートラルに向けて前進していくという旗印とする目論見があったようですが、想定どおりに進まないEVの普及と、EV生産への先行投資を回収できない自動車メーカーからのSOS、そして中国の自動車メーカーからの攻勢を受け、自動車業界とEU政府との不協和音が大きくなってきました。
特に自動車産業が国の柱となっているドイツでは、この目標の達成が困難になるにつれ、産業界からの不満の声が強くなっていました。そして2025年10月、ドイツのメルツ首相は、この目標を撤回させるためにあらゆる手段を講じるとの意向を表明するに至りました4)。
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中国のNEVクレジット制度による市場創造

中国は「NEV(新エネルギー車)クレジット制度」というルールを用いてNEVシフトを強力に推進してきました。これは自動車メーカーに対し、企業平均燃費(CAFC)の達成と、生産台数に対するNEVの比率達成という2つの義務を課すもので、目標を達成できない場合は、達成した他社からクレジットを購入する必要があります。
この制度は、未達企業に罰則を課す一方で、NEVで先行したメーカーには収益機会を提供することで、NEVの生産を後押しする効果を発揮してきました5)。このほかにも中国政府は、自動車産業において世界の強国になるという目標のもと、電池を含めたNEVサプライチェーンの強化や、SDV(ソフトウェア定義車)のコア技術となるスマート化技術・自動運転技術に対する支援、また消費者側への補助金施策などを幅広く実施してきました。
その結果、2025年に入ってからはNEVの販売比率が50%近くに達するなど、世界でも類を見ない電動車先進国となりました。そしていま中国のメーカーは、厳しい市場で鍛えられたNEVの商品力・技術力を活かし、世界市場に打って出ようとしています。
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日本における国・自治体の二本立て補助金

日本政府は「グリーン成長戦略」のなかで、2035年までに乗用車の新車販売における「電動車」の比率を100%にするという目標を掲げ、EV・PHEV・FCEVへ補助金を交付しています。
この目標を読み解くために重要な点は、「電動車」の定義が非常に広いことです。EUのZEV規制とは異なり、EV・PHEV・FCEVに加えて、日本の自動車産業が世界的な強みを持つHEVも含まれています。これは、既存の産業基盤と技術的優位性を活かしながら、段階的に脱炭素化を進めようとする現実的なアプローチを反映したものです6)。
地方自治体でも独自のZEV普及支援策を設けているところがあります。東京都の「ZEV普及プログラム」は、2030年までに都内で販売される乗用車の新車を100%「非ガソリン化」することを目標としており、EV・PHEV・FCEVを対象に手厚い購入補助金制度を設けています。
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参考資料
6)経済産業省「グリーン成長戦略(概要)」P11
規制と市場の間で岐路に立つ自動車メーカー

カーボンニュートラル達成に向けた規制や支援策の揺らぎによって、自動車メーカーは強い影響を受けてきましたが、いずれにせよ自動車産業に変革のときが来ていることは間違いありません。そのため各社は、各国の地域事情や自らの得意分野も踏まえて、重大な決断を下しつつあります。
マルチパスウェイを堅持するトヨタ自動車
特定の技術に絞るのではなく、EV・PHEV・FCEV・HEV・水素エンジン車まで、地域のエネルギー事情やインフラ整備状況に応じて最適なソリューションを提供すべきだという考え方を一貫して堅持しているのがトヨタ自動車です。カーボンニュートラル燃料を見据えたエンジン開発を継続する一方、新たなEVモデルを各地域で継続的に投入し、全固体電池についても各社と協力しながら材料開発・量産体制の構築を進めています7)。
EVへの強いコミットメントを示す日産自動車
世界に先駆けて量産EV「リーフ」を市場に投入したパイオニアとして、日産自動車は電動化への強いコミットメントを持っています。2024年3月に発表された中期経営計画「The Arc」において、2026年度までに16車種の電動車を投入することを目指していました8)。一方で、続く経営不振がますます深刻になっており、収益性の回復が最優先課題となっています。これまで手薄になっていた日本市場に対し、新型車攻勢によるブランド復権を狙います。
現実路線に軌道修正したホンダ
ホンダは「2040年までに四輪車の世界販売をEVとFCEVで100%にする」という長期目標は維持しつつも、足元の戦略を現実路線に修正しました。2030年時点のEV・FCEVの販売比率が目標の30%から20%程度に下がる見通しを示す一方、当面は収益性の高いHEVの販売を現在の2倍以上となる220万台規模にまで拡大する方針を示しています9)。これは、EV市場の成長鈍化と開発コストの増大に対応する実利的な判断といえます。
販売台数の維持を試みるテスラ
テスラは、プレミアムEV市場での立場を確立した後、その軸足を明確に大衆化へと移しています。最近発表された廉価版モデル3・モデルYは、同社の高い生産効率を武器に、量販価格帯へ直接切り込む刺客です。一方で、テスラはロボタクシー市場への参入や、人型ロボットおよびAI開発へのリソース投入を強調しています。このような動きから、自動車メーカーとして規模を追求することから降りて、AIを軸としたソリューション企業へとピボットしようとしているようです。
中国を制したBYDは海外進出に意欲
BYDは、バッテリーから半導体、車両組立までを自社グループでまかなう垂直統合モデルによって、コスト競争力に強みがあるメーカーです。2022年4月にNEV専業メーカーとなり、EVはもとよりPHEVを得意としており、2024年には中国市場において販売台数トップのブランドとなりました。
2025年になり、中国市場の急速な飽和によって販売台数に陰りが見え始めていますが、海外進出にも注力しており、欧州や東南アジア、中南米、そして日本市場にも進出しています。日本では軽自動車のEV「ラッコ」を専用開発する10)など、徹底したローカライズ戦略を展開しています。
戦略的後退を選んだメルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツは、「市場環境が整えば2030年までに販売する新車をすべてEVにする準備を整える」という目標を2021年に掲げましたが、EV需要の減退により、2024年になってこれを修正しました。最新の計画では、「2020年代後半までにPHEVを含む電動車の販売比率を最大50%」という目標を掲げています11)。また、これまで大きな収益源だった中国市場で販売台数が急減し、同社の経営を圧迫しています。コストのかかるEV開発や生産インフラ構築を先送りしながら、収益性の高いHEVやエンジン車への回帰を優先している状況です。
EV普及における課題
急務となる充電インフラの整備
消費者がZEV購入をためらう大きな理由のひとつが、充電インフラの不足に起因するEVの航続距離への不安です。必要なときに確実に充電できる環境がなければ、長距離移動への不安は払拭できません。
日本政府もこの問題を重要視しており、経済産業省は2030年までの充電インフラ整備目標を、当初の15万口から30万口(うち急速充電器3万口)へと倍増させる方針を打ち出しました。しかし、2024年度末時点での国内設置数は約6万8000口(基礎充電含む。うち急速充電器1万2000口)にとどまっており、目標達成までは道半ばといったところです12)。
近年では、数の増加だけでなく質の向上も課題となっています。充電時間を短縮するため、特に高速道路などでは従来の50kW級から90kW~150kW級の高出力な急速充電器の整備が急がれています。2024年度末時点には、サービスエリア・パーキングエリアにおける90kW以上の急速充電器が全体の67%を占めるまでになり、今後も高出力化が急ピッチで進んでいく予定です。
参考資料
12)経済産業省「充電インフラの整備に関する取り組み」
ZEVのコストを決めるバッテリーと原材料
ZEV普及における最大の障壁は、依然として車両価格の高さにあり、おもな要因は車両コストの3~4割を占めるとされるリチウムイオンバッテリーにあります。
バッテリーパックの価格は、長年にわたり劇的な低下を続けてきました。初代日産「リーフ」が発売された2010年には1kWhあたり1200ドル以上だった価格が、2024年には115ドルまで下落しました13)。しかしながら、リチウムなど重要鉱物の価格は上下変動が大きく、サプライチェーンにおけるリスク要因となっています。
リユース・リサイクル市場の確立が不可欠
またZEVの普及は、将来的に大量の使用済みバッテリーをどう処理するかという新たな課題を生み出します。環境負荷を低減し、資源を有効活用するためには、リサイクルシステムの構築が不可欠です。
日本では「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)」に基づき、自動車解体業者がリチウムイオンバッテリーやニッケル水素バッテリーを適切に取り外し、回収することが義務付けられています。
回収されたバッテリーは、セルやモジュール単位に分解して、そのまま定置型蓄電池など二次電池として再利用(リユース)する方法や、セルをさらに分解して原材料ごとに分けて再資源化(リサイクル)する方法で再利用されています。EVバッテリーのリユース・リサイクル事業は、今のところ経済合理性のある持続可能な事業モデルにはなっていません。低コストなバッテリーリサイクル技術と、事業性のあるリユース市場の確立・拡大が、目下の課題となります。
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ZEV購入時に知っておきたい補助金制度
ここまでZEVに関する定義、各国の取り組みや課題について触れてきましたが、前述のとおり、日本ではZEV普及を促進しています。
日本ではZEVである、EV・FCEVを購入する際には、国からの補助金を受けることができます(PHEV購入時も補助金をもらえます)。また自治体によっては、さらに補助金を受け取ることができます。ここでは、国と東京都の補助金の例を説明します。
国の補助金(CEV補助金)
経済産業省が所管する「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」。2025年度においては、車種ごとに補助額が決定され、普通乗用車タイプのEVで最大90万円、小型・軽EVで最大58万円などとなっています14)。
〈表〉2025年度のCEV補助金の上限額
| CEV補助金の上限額 | |
| EV(普通車) | 90万円 |
| 小型・軽EV | 58万円 |
| FCEV | 255万円 |
| PHEV | 60万円 |
参考資料
14)次世代自動車振興センター「CEV補助金対象 車両」
東京都の補助金(ZEV補助金)
東京都は、独自のZEV購入補助金制度を実施しています。ZEVとしていますが、PHEVも対象に含まれており、対象車種は国の補助金にプラスして都の補助金を受け取ることができます。2025 年度の基本となる補助額は、EV、PHEVが最大60万円、FCEVでは最大190万円となっていて、充放電設備(V2H)や再生可能エネルギー電力(再エネ100%電力契約または太陽光発電設備)を導入した場合は、さらに加算されます15)。
〈表〉ZEV補助金(個人)の補助金額(2025年度)
| 自動車メーカー別の補助額 | 充放電設備、再生可能エネルギー導入上乗せ | |
| EV | 最大 60 万円 | + 最大 40 万円 |
| PHEV | + 最大 25 万円 | |
| FCEV | 最大 190 万円 | + 最大 35 万円 |
国と都の補助金を組み合わせることで、EVの場合は実質負担額が車両価格から100万円以上減るケースもあり、同クラスのガソリン車と実質的な価格がほぼ同じ、あるいは下回ることもあります。
参考資料
15)東京都「令和7年度 ZEVの車両購入補助金のお知らせ」
ZEV移行期に求められる新たなロードマップ
ここ数年の経過で、ZEVへの移行はEVの生産台数が直線的に増えていくような単純なプロセスではないことがはっきりしました。2025年現在では、より現実的な市場の声に寄り添ったロードマップが求められています。
今後の10年を決定づける重要な要素として、バッテリーコストを引き下げるための化学的な進化と生産技術の進化、継続的なインフラ整備と事業化への道筋、そして、変化に対して柔軟に、素早く対応できる自動車メーカーの経営の舵取りが最も重要なこととなりそうです。
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