EV100とは?日本企業7社の取り組みと加盟の意義やメリットを解説

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「EV100」という取り組みをご存じでしょうか。企業が事業活動で使用する業務車両の100%EV化を目指す国際企業イニシアチブのことです。じつは、EV DAYSを運営している東京電力グループもこの取り組みに参加しています。ただ、多くの人はEV100についてよく知らないことでしょう。そこでEV100の概要、どんな企業が加盟しているのか、参加するメリットについて解説します。

 

※「EV100」における「EV」には、EV(BEV)PHEV・レンジエクステンダー車(最低50kmのEV走行距離)、FCEVが含まれます。

 

 

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そもそも「EV100」とは?

「EV100」はカーボンニュートラルの実現に向けて、とても大切な取り組みですが、多くの人には聞き慣れない言葉でしょう。そこでまず、EV100とはどんな取り組みなのか、どんな日本企業が参加しているのかなど、EV100の概要について解説します。

 

EV100は業務車両の100%EV化を目指す取り組み

電気自動車がチャージしている様子

画像:iStock.com/3alexd

 

EV100は「Electric Vehicles 100%」の略称で、業務車両の100%EV化や充電インフラの整備などを推進する企業が世界各国から参画する国際イニシアチブのことです。

自動車は移動や輸送に欠かせない手段です。その一方、ガソリン車などが排出するCO2(二酸化炭素)は気候変動の一因ともなっています。たとえば、国内におけるCO2排出量のうち、2022年度で運輸部門(自動車等)のCO2排出量は18.5%を占め、産業部門(工場等)に次いで多い比率となっています1)

カーボンニュートラルを実現するには、運輸部門のなかで大きな割合を占める自動車の電動化が非常に重要になるわけです。

また、企業活動における温室効果ガス排出量の国際的な基準「温室効果ガス(GHG)プロトコル」は、温室効果ガス排出量を「スコープ1」「スコープ2」「スコープ3」の3つに分類していますが、業務車両の100%EV化は、直接的なスコープ1だけでなく、3つのなかで一般的にもっとも排出量が多いスコープ3の削減に向けたカギになるとも見られています。

〈図〉温室効果ガス(GHG)プロトコルの考え方

温室効果ガスプロトコルの考え方

 

そこで、輸送手段の100%EV化を掲げ、企業がリーダーシップを示してEV普及を加速させるべく2017年9月に発足したのがEV100です。国際環境NPO法人のThe Climate Group(クライメイト・グループ)が運営し、JCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)が日本の窓口となって支援しています。

 

 

EV100に加盟する日本企業は東電HDなど7社ある


EV100には、スウェーデン発祥の家具世界最大手のイケア、イギリスに本社を置く世界有数の家庭用品メーカーのユニリーバをはじめ、世界各国から128社(2024年3月時点)の大手企業が参加しています2)

日本企業では、2024年11月時点で以下の7社がEV100に加盟しており3)、このうち東京電力ホールディングスは2019年5月に国内のエネルギー企業として初めて加盟しました。

〈表〉EV100に加盟している日本企業 ※加盟順、2024年11月時点

加盟年月 企業名
2017年11月 イオンモール株式会社
2017年11月 アスクル株式会社
2018年10月 日本電信電話株式会社
2019年5月 東京電力ホールディングス株式会社
2019年9月 株式会社高島屋
2021年9月 株式会社関電工
2021年12月 ニチコン株式会社

 

EV100に参加するために必要な要件とは?


企業がEV100に参加するためには、業務車両のEV化や充電器の設置などEV普及を推進していることが前提となり、また、電源には再生可能エネルギーを使用することが推奨されています。

そのうえで、以下の4つの取り組みのなかから1つ以上を2030年までに行うと宣言し、達成することが求められます4)

〈表〉EV100に参加するために必要な要件

➀自社で直接管理する業務車両(所有・リース)のEV化(※)

②サービス契約(レンタル・タクシー等)でEV利用を求める

③従業員のEV利用を支援するため関連する全施設に充電器を設置

④顧客のEV利用を支援するため関連する全施設に充電器を設置

※:3.5tまでの車両の100%EV化、3.5t~7.5tの車両の50%EV化。物流会社の場合は、すべての都市部/ラストマイル配送をEV化する。

なお、EV100における「EV化」は、EV(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)・レンジエクステンダー車(最低50kmのEV走行距離)、FCEV(燃料電池車)が対象となっています。

 

 

 

EV100に加盟する日本企業7社の取り組み

東京電力パワーグリッド木更津支社の駐車場に並ぶ充電用コンセントとEV・PHEV

 

EV100に加盟している日本企業7社は、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。各社が公表している資料をもとに、それぞれの取り組みを簡単に紹介します(以下、加盟順)。

 

【イオンモール】自社の商業施設にEV充電器を設置


イオンモールは2017年11月に日本企業として初めてEV100に加盟し、おもに自社で管理・運営する商業施設への充電器の設置を進めています。2024年2月時点で、国内外の373施設に計3156基(国内2357基、海外799基)を設置しています5)

なお、イオンモールは地域でつくられた再生可能エネルギーを地域で融通し合う「再エネの地産地消」にも取り組んでいます。各家庭の太陽光発電で発電された余剰電力をEVに充電し、それを商業施設に導入したV2Hを介して放電し、店舗で活用する取り組みも行っています。

 

 

【アスクル】配送車両を2030年までに100%EV化


アスクルは、2017年11月にEV100に加盟し、2030年までに子会社が所有またはリースする、ラストワンマイルに使用される配送車両を100%EV化することを目標としています。

また、アスクルでは自社が直接影響を及ぼせる「事業所・物流センターから排出されるCO2」「物流センターからお客様までの配送に使用する車両から出るCO2」をともにゼロにする「2030年CO2ゼロチャレンジ」を掲げ、EVと再エネ導入を進めています6)

 

 

【日本電信電話】一般車両約1万台を100%EV化


NTTグループは2018年10月に電気通信事業者として世界で初めてEV100に加盟しました。目標として宣言しているのは業務車両の100%EV化です。具体的には、NTTグループが所有している一般車両約1.1万台について、2025年までに「50%EV化」、2030年までに「100%EV化」することを目指すとしています7)

 

【東京電力HD】EVの充電に使う電力に環境価値を付加

Green Powerのマークのついた車両の後ろ姿

 

東京電力ホールディングスは2019年5月に国内エネルギー企業として初めてEV100に加盟しました。参加にあたり、東京電力グループが保有する業務車両約3600台について、2025年度までに50%、2030年度までに100%EV化する目標を設定しています。

また、EV100では電源に再生可能エネルギーを使用することが推奨されていますが、東京電力グループでは、グループ会社の日本自然エネルギーから「グリーン電力証書」を購入し、充電に使用する電力に再生可能エネルギーにより発電された電気の環境価値を与えています8)

 

 

【高島屋】外商営業車両の台数を減らしてEVに転換


高島屋は2019年9月にEV100に加盟し、2030年までに自社が直接管理する車両を100%EV化することを目指しています。具体的には、外商営業車両の台数削減とEVへの転換を順次行っていくとともに、顧客が利用する駐車場への充電器設置を拡大することによりEVの普及促進に取り組んでいくとしています9)

 

 

【関電工】電動化可能な車両2000台をEVへシフト


関電工は2021年9月にEV100に加盟し、2030年までに電動化が可能な車両2000台をEVへシフトすることを宣言しています。また、関電工では走行以外の高所作業に電気を使用するバッテリー搭載型高所作業車の導入につとめ、作業中の騒音・振動の低減、CO2削減などに取り組んでいるとしています10)

 

【ニチコン】充電インフラやV2HでEV普及に貢献

EV Power Station画像

 

7社のなかでは比較的最近となる2021年12月に加盟したのが、各種コンデンサーの総合メーカーのニチコンです。2030年までに業務車両の100%EV化を目指しています。また、V2H市場でトップシェアを誇る企業らしく、充電インフラ整備やV2Hシステム、外部給電器(V2L)などを通してEV普及に貢献していくとしています11)

 

 

 

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業務車両の100%EV化によるメリットは?

スーツ姿の人が「メリット」を丸で囲む

画像:iStock.com/78image

 

温室効果ガスの排出を抑えて環境負荷の低減に貢献するのは大手企業の社会的責任です。とはいえ、企業活動の一環として取り組む以上、実利としてメリットがあるかどうかも重要でしょう。そこでEV100に加盟する多くの企業が推し進める業務車両の100%EV化による3つのメリットを紹介します。

 

メリット①大手企業としての社会的責任をはたせる


2050年カーボンニュートラルに向け、自動車メーカーにはサプライチェーン全体の脱炭素化推進とその支援にコミットすることが求められていますが、それは自動車産業にかぎった話ではありません。世界では大手企業によるサプライチェーン全体の脱炭素化を目指す動きが強まっており、業務車両の100%EV化は大手企業としての社会的責任をはたすことにもつながるのです。

 

メリット②ランニングコスト(燃料費)を抑えられる


業務車両の100%EV化には経済的なメリットもあります。電気代が高止まり傾向にあるとはいえ、ガソリン価格も高騰しているため、電気で走るEVは走行コストにおいて有利な場合が多いです。また、EVはエンジンオイルなどの定期交換も必要ありません。実際にNTTグループは100%EV化に取り組む理由のひとつとして、EV100への加盟時に「車両保有コスト低減」を挙げていました7)

 

 

メリット③補助金を使えて税制優遇も受けられる


カーボンニュートラルの実現にはEVの普及が欠かせません。そのため、国や自治体はEVの需要創出や車両価格の低減を促すことを目的にEVの購入費用を補助しています。また、業務車両のEV化には各種税金の減免制度を利用できるメリットもあります。

 

 

EV100と「RE100」「EP100」はどう違う?

風力発電やダムやソーラーパネルの画像

画像:iStock.com/bombermoon

 

EV100と似たような国際イニシアチブに「RE100」と「EP100」の2つがあります。RE100は「Renewable Energy 100%」もしくは「Renewable Electricity 100%」の略称で、企業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指す国際イニシアチブのことです。

2024年11月時点で88社の日本企業がRE100に加盟し、そのなかにはEV100にも参加するアスクルが含まれています3)

もうひとつのEP100は「Energy Productivity 100%」の略称で、事業のエネルギー効率を倍増させること(100%増)を目標に掲げる企業が参画する国際イニシアチブです。2024年11月時点で4社の日本企業がEP100に加盟しており、そのなかにはEV100にも参加する日本電信電話が含まれています3)

 

 

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脱炭素化には業務車両をEV化する取り組みが欠かせない

業務車両の100%EV化に向けて課題があることは事実です。たとえば、車両や充電設備の導入にはコストがかかり、国産車には航続距離などの実用性と経済合理性を満たす車種がそれほど多くありません。充電インフラの整備もまだ不安視されています。

しかし、走行コストや維持費など、長い目でみれば業務車両のEV化にはメリットがたくさんあります。なにより、脱炭素社会の実現には業務車両のEV化という取り組みが欠かせません。そのためにも、多くの企業がEV100に参加し、強いリーダーシップを示してEV普及を加速させることに期待しましょう。

 

※本記事の内容は公開日時点での情報となります

 

この記事の著者
EV DAYS編集部
EV DAYS編集部